地域医療構想は策定されたけれど、地域ごとの医療提供体制の再編はこれからどう進んでいくのか-。厚生労働省の「地域医療構想に関するワーキンググループ」で座長を務める尾形裕也氏(東大政策ビジョン研究センター特任教授)に、地域医療構想に関する疑問を聞いてみた。
尾形氏は、2025年の必要病床数が地域ごとに推計されたことで、将来の患者ニーズが明確になり、各医療機関はニーズが大きく変わることを前提に、自分たちの戦略を考えてほしいと語る。また、病床機能報告で「すべての病棟機能を高度急性期」と報告するような病院も、データがオープンになることで、スタンスを変えていくかもしれないという。【聞き手・大戸豊】
■終わりではなく、むしろスタート
―全都道府県が3月末までに地域医療構想を策定した。医療提供体制の再編は今後、どう進められるのか。
全都道府県の地域医療構想が出そろったということ。これは終わりではなく、むしろスタートだ。各地の地域医療構想調整会議では、病床機能報告のデータと2025年を想定した医療提供体制の将来像を突き合わせつつ、議論していくことになる。1年で終わる話ではなく、毎年PDCAサイクルを回していくという話だ。
-なぜ、構想を策定する必要があったのか。
念頭に置いてほしいのが、今後の人口動態だ。これまでの100年間で日本の総人口は一気に伸びて、1億2000万人を超えた。しかし、人口は既にピークアウトし、あと100年でものすごい下り坂になることは確実だ。
人口が減少局面の時に、増加の局面と同じ発想をするわけにはいかない。都市部と地方などで地域差はあるが、人口が減ることを前提に考えることが不可欠だ。
-必要病床数の意味するところが理解しにくい。
将来の患者ニーズを明確に示したということ。現在の受診行動と提供されている医療を前提に、25年にかけて人口構成が変わることで、患者のニーズはどれくらいになるのかを推計した。かなりシンプルな話だと思う。
-医療界では、自分たちの将来像を描いてこなかったのか。
どの業界でも将来の市場を予想しながら、店舗展開を考えたりしている。医療もまずは、患者のニーズありきだ。「うちは高度急性期一本でやる」と決めたとしても、地域に高度急性期のニーズがなければどうしようもない。ニーズが大きく変わる中、自分たちの戦略を考える上でそれを前提にしてほしい。
(残り2170字 / 全3154字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】