【監修:日本政策投資銀行企業金融第6部ヘルスケア室 近藤健太課長、日本経済研究所医療福祉部 菅原尚子部長、澤田武志副主任研究員】
厚労省の公開データで無料の“法人ドック”-ゼロから始める病院データ経営(1)
第2回では、総務省がホームページ上で公開している「地方公営企業年鑑」を活用する方法を取り上げます。
A県A市にあるキソ記念病院(一般病床300床)は、弟のきくぞうが事務長、兄のだいじろうが病院長を務める民間病院です。全病棟で一般病棟7対1入院基本料(7対1)を届け出て、急性期機能を担ってきましたが、高齢の患者が増えて平均在院日数が長期化。このままでは7対1の平均在院日数の要件(18日以内)を満たせなくなると危惧して昨年、1棟(60床)を地域包括ケア病棟に転換させました。
患者の高齢化は、A県全体で進んでいます。その影響は、県が推計した2025年時点の機能別の必要病床数に表れています。具体的には75歳以上の割合が高まるため、高度急性期機能や急性期機能を担う病床の需要はあまり見込めないようです。
その一方で、大腿骨頸部骨折の患者にリハビリテーションを提供したりする回復期機能の病床は不足する見通しです。そんな中、キソ記念病院では回復期機能への転換に前向きなきくぞう事務長と、急性期機能にこだわるだいじろう院長のにらみ合いが続いています。
きくぞう事務長が機能転換を視野に入れるのは、厚労省が公開する「病院経営管理指標」を使って同規模の病院と自院とで実績を比べた結果、患者一人当たりの入院収益(入院単価)や一床当たりの医業収益が低いと分かったためです。
その結果をだいじろう院長にも見せたのですが、「いろんな病院の平均値と比べただけじゃないか。そんなものは信用できん」とバッサリ。機能転換への理解を得ることはできませんでした。
自院の行く末を案じ、胃がきりきりと痛むきくぞう事務長でしたが、きょうは珍しく晴れやかな表情です。タダデ氏に相談する約束の日がやってきたのでした。
きくぞう「会いたかったぞ、タダデさん。うちの病院はこれからどうすればいいんじゃ。もう分からん。わしにはさっぱり分からん」
タダデ「ずいぶんとお困りのようですね。それでは約束通り、自院の経営状況を分析する2つ目の方法をお教えしましょう。もしかしたら、院長を説得できるかもしれませんよ」
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