小規模事業所が大多数を占める介護業界にあって、圧倒的なスケールを誇るのがニチイ学館だ。1000を超える事業所を擁し、介護部門だけで1000億円を超える売り上げをはじき出すこの「介護の巨人」も、既に「ニチイライフ」というサービスブランドを立ち上げ、新たなビジネス大陸の開拓に乗り出している。その基本方針は、家事・育児・介護といった生活の全般をトータルに支援すること。さらに今年からは新たな顧客層拡大の取り組みを意識した新戦略も展開し始めている。【ただ正芳】
ニチイライフで3年の勤務経験を持つ石井直美さんは、介護福祉士の資格を持ち、訪問介護員として長い勤務経験があるベテランのヘルパーだが、保険外サービスである「ニチイライフ」のサービスに従事し始めて、思うことがある。
「『自分が何とかできるはずなのに…』と悔やむことが、ほとんどなくなったということです」
介護保険制度の訪問介護では、実施できるサービスと実施できないサービスが、恐ろしく細かく決まっている。
例えば、利用者の食事を作ることはできても、同じ時間に食卓を囲むはずの家族の食事まで作ることは許されない。また、利用者の服を洗濯することはできても、家族の服を一緒に洗うことはできない。つまり、利用者のためのサービスは提供できても、利用者の家族にかかわるサービス提供は認められない。さらに利用者が入院してしまえば、その利用者に対するサービスもできない。
だから石井さんのように、「自分ができること、そして利用者も家族も望んでいるサービスを断らざるを得ない」ことを悔やみ、悩む訪問介護員は、日本中の現場にいる。
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