内科のみを標榜する大森山王病院(東京都大田区、一般25床・療養35床)は昨年9月、「一般病棟7対1入院基本料」(7対1)を届け出ていた一般病棟を丸々「地域包括ケア病棟」に転換させた。同病院を運営する中島記念会の戸金隆三理事長は、7対1の施設基準を満たしつつも転換を決めた当時を、地域の中で同病院に求められる役割を考え抜いた結果だったと振り返る。【佐藤貴彦】
「『ときどき入院、ほぼ在宅』がいい」と話す戸金理事長は、地域の高齢患者が必要とするサービスを網羅的に提供すべく、体制を整えてきた。
■無謀とも思える丸ごと転換
同病院にあった7対1病棟では、在宅療養中に急性増悪したサブアキュートの患者や、近隣の大学病院などで急性期の治療を終えたポストアキュートの患者を受け入れ、平均18日以内で在宅復帰させていた。7対1の施設基準が厳格化された2014年度診療報酬改定の後も、要件はすべてクリアしていた。
しかし、14年度改定で在宅復帰率の要件が追加されたように、今後の改定でも7対1の施設基準の厳格化は止まらないと予想された。「やるなら早い方が良い」と考えた戸金理事長は、自院が果たしてきた役割を今後も続けるために転換を決めたという。
ただ、転換には収入などの変化がつきものだ。中央社会保険医療協議会が14年度に実施した実態調査では、一日1591点の7対1を算定する患者の一日平均単価が5000点を超えたのに対して、地域包括ケア病棟入院料は一日2558点(同入院料2は2058点)だが、算定患者の単価が3000点を下回った =グラフ、クリックで拡大= 。単価の差が生じるのは、例えば、7対1と併算定できる診療報酬項目の多くが、地域包括ケア病棟入院料の包括範囲に含まれるためだと考えられる。
こうしたデータを見ると、7対1病棟を丸ごと地域包括ケア病棟に転換する同病院の取り組みは無謀にも思える。しかし戸金理事長は、転換することで収支は改善すると見込んでいた。
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