2016年度診療報酬改定で、一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」(看護必要度)などの一部の項目を看護職員以外が評価できるルールになった。これにより、A項目の「抗悪性腫瘍剤の内服の管理」を評価する業務を薬剤師に任せることも可能だが、得策なのか-。病棟薬剤師の業務の在り方を含め、日本病院薬剤師会(日病薬)の川上純一常務理事に聞いた。【聞き手・構成=佐藤貴彦】
16年度改定の基本方針は、「地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携に関する視点」を重点課題に挙げていた。その流れの中でチーム医療が推進され、看護必要度の評価を薬剤師や理学療法士、管理栄養士でもできるようになった。そのコンテクストは日病薬として理解している。
しかし、仕事をシフトすることが、すなわちチーム医療とは言えないのではないか。
むろん、勤務医不足の中、膨大な医師の業務の一部を看護師や医療クラークに任せることには一定の意味がある。ただ、看護職員の負担軽減のためだけに、看護必要度に関する業務を薬剤師に移管することをチーム医療とは呼べないだろう。なぜなら、医療の質や安全性を高めることがチーム医療の本質だからだ。
例えば、患者さんの抗がん剤の内服管理やその評価を薬剤師に任せ、看護職員が全く関与しなくなったら、医療の質は向上するどころか悪化しかねない。
というのも、質の高いがん看護を実践しようとすれば、患者さんが受けている化学療法が、皮膚障害を起こしやすいものか、それとも口内炎などを発生させるものかといった情報を把握する必要がある。
口内炎が発生しやすい内容なら、口内炎によって食事を取りにくくなっていないかチェックすべきだし、そうした状況を把握すれば、患者さんの退院後の生活を支援するために何が必要か考えることができる。患者さんに合わせた看護を実践するために、むしろ看護職員が評価を担当すべきだろう。
ただ、薬剤師が評価を担当できるようになったことをきっかけに、看護職員と薬剤師が協同して抗がん剤の内服管理を行う体制を構築すれば、ケアの質は高まるはずだ。それには薬剤師と看護職員の手厚い配置が欠かせない。急性期の病院には是非それを目指してほしい。
■経営面から考える病棟薬剤師の本来業務
医療の質を高めた方が、医業収益は増えるという視点も重要だ。「一般病棟入院基本料」の7対1を算定するような急性期の病院では、救急搬送された患者さんや手術を要する患者さんの入院単価が高く、そうした患者さんを受け入れる機能が経営面でも主軸になる。受け入れた患者さんを早期に退院させ、次の患者さんを受け入れる効率性も求められる。
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