奈良県立医科大の今村知明教授(健康政策医学講座)は、地域医療構想の策定に関する調査の一環として、7対1病床から地域包括ケア病棟などに転換した好事例についての調査を進めている。病気と共存しながら地域で生きていく高齢者を支えるには、高齢者の医療に特化した病棟が必要になるという。ただ、地域の在宅や介護の受け入れ体制を決めないまま、療養病床から患者を出すことで、将来的に地域の医療・介護が破綻する危険性も指摘する。
今村教授は、地域医療構想について、病床転換や削減が目的ではなく、「将来の医療・介護の破綻回避であり、全員で解決策を考えていくしかない」と訴える。【大戸豊】
研究は、地域連携や病床機能分化を推進するための事例調査をはじめ、急性期病院に関する指標や急性期・回復期・慢性期にまたがるクリニカルパスの作成が軸になっている。
※「病床機能の分化・連携や病床の効率的利用等のために必要となる実施可能な施策に関する研究」
今村教授は当初、このような研究で成果を出すのは不可能と考えていた。しかし、2025年まで10年を切る中、無策のまま最悪の状況に突入しないために何ができるのか、周囲の勧めもあり、研究を開始した。
■患者が変わる中で急性期から回復期へのシフトを促す
16年度診療報酬改定では、「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)のハードルが上がった。
今村教授は、7対1の病院が重症患者の獲得に必死になり、結果として病床が空き、経営的に追い詰められるといった、病院同士のつぶし合いが起きないかを危惧している。
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