デジタル技術を駆使して業務の効率化やサービスの質改善を進める介護DXの本格的な試みが始まっている。介護施設10カ所、病院3カ所などを運営する社団法人慈恵会(青森市)では、最先端の技術を2021年から次々導入してきた。仮想空間で業務改善をシミュレーションして、リアルの世界に反映させる「デジタルツイン」と呼ばれる技術では、入浴業務のための時間をこれまでに合わせて50分短縮するなど効果が出始めているという。介護分野でDXを進めるのはなぜか、丹野智宙理事長に聞いた。【兼松昭夫】
■業務効率化の成果は段階的に
-介護現場の業務改善にデジタルツインを活用することで、入浴業務の時間を短縮できたとお聞きしています。介護DXに取り組むきっかけは何だったのでしょうか。
丹野理事長 デジタルソリューションを手掛ける「マクニカ」(横浜市港北区)とDX共創の契約を交わし、勧められたのがきっかけです。
医療や介護の世界でも使われ始めた「DX」(デジタルトランスフォーメーション)という言葉には、さまざまな意味が内包されています。介護では、今のところ「記録をデジタル化する」というような意味合いで使われることが多いようですが、私たちは、それにとどまらずデジタル技術で業務そのものを変革しようと考えました。
DXとは、デジタル技術を活用することでスタッフの働き方を変革し、顧客満足度を最大限高めるためにチャレンジすることだと考えているからです。
入浴業務がその代表例です。介護現場では、夜勤明けのスタッフが入浴介助のためにその後も勤務し続けなければならないことがありますが、それを効率化できたら負担を大幅に軽減できるはずです。
マクニカに相談すると、デジタルツインという技術を活用できるかもしれないということでした。
デジタルツインとは、リアルの情報を使ってデジタル空間に現実を忠実に再現し、そこで業務改善などをシミュレーションする技術です。デジタル空間に改善のモデルを作り上げ、リアルの世界への反映を目指します。
これまで製造業などで活用されてきた技術ですが、慈恵会では介護老人保健施設「青照苑」(定員100床)で21年12月ごろ取り入れました。仮想空間に「デジタル青照苑」を作って業務改善で試行錯誤しています。
■ご飯をおいしく炊けても負担は減らない
-デジタル技術を導入することに介護の現場からはどんな反応がありましたか。
丹野理事長 青照苑では、
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