相次ぐ食材費の値上げや原材料の高騰が病院給食に影を落とし始めている。世界的な天候不順による農産物の不作や新型コロナウイルスの感染拡大によるサプライチェーンの停滞などでくすぶっていた病院給食の食材費、原材料問題が、ロシアのウクライナ侵攻で一挙に噴き出した形だ。地道にコスト削減して積み上げた1,600万円をこの数カ月で吹き飛ばされた病院グループもあり、病院経営を圧迫している。果たして妙案はあるのか-。病院現場の取材や、関係者や有識者へのインタビュー取材を通じて、解決に向けた手掛かりを探る。【兼松昭夫、川畑悟史】(随時掲載)
1日1,350食を入院患者に提供する湘南鎌倉総合病院。食材高騰の影響は大きい
6月中旬の午後6時すぎ。神奈川県鎌倉市にある湘南鎌倉総合病院の入院病棟では、看護師が夕食の配膳・下膳業務に追われる。入院患者へ1日に提供する食事は朝昼晩の3食合わせてざっと1,350食に上る。1日に1,350食が配膳されるというのは通常の光景だが、芦原教之事務長は「最近の食材費の高騰は本当に悩ましい」とため息をつく。
入院患者に提供する食事は、施設地下にある調理場で調理する。関連会社を活用するものの直営方式で入院患者に食事を提供している。「さまざまな患者さんが入院し、その都度体調などに応じた食事を提供するため、直営の方が自由度は高く、食材ロスも減らせる」(芦原事務長)。
同病院は徳洲会グループの1つ。全国で71病院を運営しており、このうち41病院は直営方式を取る。食材費の高騰は全国的な潮流だ。それだけに71病院を抱える巨大グループにとって頭の痛い問題だ。
ただ、食材費や原材料の値上がりは今に始まった話ではない。同グループの鑓水(やりみず)弘樹・栄養部会長は「値上がりは2020年春ごろ食用油などで目立ち始めた」と話す。
農林水産省によると、食用油の原材料となる大豆やトウモロコシなど穀物の国際価格は20年後半から南米の乾燥、中国の輸入需要の増加、21年の北米の北部の高温乾燥などにより上昇した=図1=。鑓水部会長の言う“20年ごろ”と一致する。
図1 穀物等の国際価格の動向(ドル/トン)
農水省の資料を基に作成
■食材の集中購買で圧縮した1,600万円が吹き飛ぶ
入院患者に提供する給食のコストを抑えようと、
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