調剤薬局の対面業務はより大切、人事制度を導入
愛知県あま市・藤井薬局の藤井新社長
有限会社藤井薬局(愛知県あま市、調剤薬局3店舗)の新社長に藤井麻由氏が就任する。「モノからヒトへ」。調剤薬局の経営にも、こうしたシフトチェンジの波が押し寄せている。そんな中で舵取りを行う藤井新社長が、最もこだわっている1つが人事制度だ。その思いなどを聞いた。
CBコンサルティング 人事支援課 課長・多田和史
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藤井麻由・新社長 藤井雅臣・現社長
-5月に社長に就任します。
藤井新社長 「藤井薬局」という屋号を残したいという思いで、現社長から事業を受け継ぐことを決めました。ただ、創業時の1999年に比べて経営環境は大きく変化しています。例えば、薬局業務におけるモノからヒトへのシフトチェンジです。医師から指示された薬というものを、ただ患者さんに渡す業務から、患者さんという「ヒト」の視点に立った業務への切り替えが求められています。
藤井薬局は、かねてより患者さんとかなり近い距離で運営してきました。ただ医師の指示通りに薬を飲んでもらうことだけではなく、患者さんが考える生き方を尊重し、その手助けとなれるように関わってきたと思っています。薬局業務がモノからヒト重視へと移る中、地域に存在する多数の薬局の中で藤井薬局が選ばれるようになるには、こうした行動を、これからも積極的、継続的にできるかに懸かっています。
そこで大切になるのは、患者さんと直接接する薬剤師、また調剤事務の対応であることは言うまでもありません。今現在も、社員の皆さんは、私たち経営層の思い描く薬局像に限りなく近く頑張ってくださっています。今後も今のような藤井薬局であり続けるためには、こうした社員の皆さんの存在は不可欠です。ただ、これまではその頑張りを評価する制度がありませんでした。まずはこうした社員の実績をそれぞれの給与にしっかり反映させ、モチベーションの向上を図ることが、藤井薬局のさらなる発展につながるのではないかと思い、CBコンサルティングさんに相談しました。
-人事制度の整備が、新社長を引き受ける条件だったと聞いていますが。
藤井新社長 これまでは、創業者である現社長のカリスマ性で社員を引っ張ってきたところがあります。もちろんそういった側面は必要だと思いますが、時代にも合わなくなっている面もあります。そのため、これからは人事制度を活用しながら社員を引っ張っていきたいと現社長に訴え、人事制度を導入してもらえないか強く訴えました。最初は首を縦に振ってくれませんでしたが、何度も人事制度の重要性を説明、説得し、現社長に理解してもらいました。
社長就任は5月ですが、22年1月から事前に導入したのは、地ならしの意味合いが強いです。ただ、人事制度の導入は社員によってプラスに働く場合とそうでない場合があります。退職者が出ることもしっかり覚悟をした上での導入の決断でした。
-どのような人事制度を整備していくのですか。
藤井新社長 例えば、調剤報酬の中に服薬管理指導料があります。算定要件として、「患者の薬剤の使用の状況等を継続的かつ的確に把握するとともに、必要な指導等を実施すること」が求められています。
この指導料を算定することは薬局にとっては当たり前のことですが、患者さんからすると自己負担が増えることになります。大切なのは、藤井薬局が提供するサービスに、患者さんが納得してくださるかどうかです。この料金を支払ってもこの薬局に来たいと思ってもらえるようにしていかなければなりません。
特に22年度の改定では、積極的に患者さんと関わることが必要となってきます。ありがたいことに、藤井薬局には積極的に患者さんへの応対に取り組んでくれる社員が多いのですが、こうした社員をしっかり評価できる内容にすること、また併せて、今後入社してくださる方への行動指針となるような人事制度を作ることを肝としていました。
それにより、今まで社員に課してこなかった成果目標を設定することにしました。算定要件に即した課題を選び、現時点で薬剤師には「新規外来服薬支援の件数」を、調剤事務に関しては「お薬手帳の確認の割合」などを掲げています。評価に比例した昇給額も設定したため、社員の皆さんも意識してくれていると感じています。
薬剤師の評価シート(一部抜粋)
調剤事務の評価シート(一部抜粋)
-この人事制度を踏まえ、今後のビジョンを教えてください。
藤井新社長 今後も時代の流れとともに、薬局経営を常に変化させていかなければなりません。その都度、人事制度の見直しを行い、これからも藤井薬局の屋号を守り続け、地域医療に貢献していきたいです。
-バトンタッチする現社長からひと言。
藤井雅臣・現社長 人事制度を作る過程で、新社長の社員に対する思いの強さが分かりました。私が採用してきた社員も新社長のために「頑張る」と言ってくれています。今後の藤井薬局を、新社長や社員に任せていって問題ないと確信しました。そこにCBコンサルティングさんがいてくださることで、さらに安心してバトンタッチができます。
【プロフィール】
多田 和史(ただ・かずふみ)株式会社CBコンサルティング 人事支援課
株式会社キャリアブレイン(現:株式会社CBホールディングス)にて、採用を中心としたコンサルティング業務に従事。その後、より広範囲な人事領域の支援を行う人事支援部を立ち上げる。調剤薬局を中心に、組織の分析から人事制度の設計や教育研修など、これまで計50社以上の支援を行う。
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