横浜市立大はこのほど、文部科学省「課題解決型高度医療人材養成プログラム」に採択された履修証明プログラムの公開授業とシンポジウムをオンラインで開催した。新型コロナウイルス感染症のポストコロナを見据えた病院経営の課題について、参加した医師などからも多数の意見があった。【齋藤栄子】
公開授業では、横浜市立大附属病院病院長・後藤隆久氏がポストコロナのケースディスカッションを行った。2019年度は4億円の赤字だったが、20年度には20億円程度のコロナ関連の補助金を受けて黒字化を果たし、入院単価が前年度比約1万円増となったものの、新規患者数はコロナの影響から減少したA医療機関(726床)を例に挙げて、補助金がなくなるポストコロナの経営判断について、参加者へ問い掛けた。
横浜市立大附属病院病院長・後藤隆久氏
A医療機関は地域最大の急性期病院として、コロナ以前は頼まれた患者は診る方針で集患し、医業収入を伸ばしていたが、支出も増加傾向にあった。患者は多いが、入院単価は今より低くなるコロナ前の経営方針へ戻るのか、現在の入院単価を維持する高価格路線を維持するのか、「選択肢は2つある」と後藤氏。また、コロナの影響で減少した患者の受療行動についても参加者に意見を求めた。
クリニックへ患者が流れた点について、高度な医療を提供する医療機関としての在り方を見直す機会だとする声や、耳鼻科のアレルギー症状などでは「病院に行かなくてもよいと患者が学んだ面もある」などの声があった。また、地域における医療機関の役割分担では「1つ1つの病院はプレーヤー」で、プレーヤー同士が話し合うのではなく、市や県が指導性を発揮して、コントローラーとして推し進めていくべきものではないかなど、地域全体を見据えた意見もあった。
後藤氏は、「急性期病院は患者減、単価増でより急性期らしくなった」と現状を俯瞰しつつも、ポストコロナの経営において単価が高くない入院患者を以前のように増やすと、多過ぎるベッドに少ない人員配置という構造が温存されると指摘する一方で、患者がこのまま戻って来なければ、地方における人口減少による急性期医療需要減少と同様の状況がいよいよ都市部でも本格化することになるため、経営のスリム化が必要だと言う。
(残り1704字 / 全2650字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】