新型コロナウイルスの感染拡大は日本の医療に何をもたらしたのか。医療機関の経営に詳しいコンサルタントに聞きました。【聞き手・兼松昭夫】
※この記事は5月19日現在の情報を基にしています。
●株式会社メディヴァ取締役・小松大介さん
3月以降一気に減収
―新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、医療機関の経営への影響が指摘されています。
現在は約60病院と約50の診療所の経営コンサルティングを担当していて、平均すると対前年度比で2割程度の減収という印象です。特に厳しいのは都心部のいわゆる「ビル診療所」です。軒並み赤字で、中には5割以上の減収というケースもあります。外出制限に伴ってサラリーマンのテレワークが始まり、新型コロナへの感染を恐れて地域の人たちも受診を控え始めたからでしょう。
これに対して病院は平均1-2割程度の減収で、やはり都心部では減収幅が大きいようです。それほど多くは把握していませんが、感染症指定医療機関など新型コロナウイルスの感染者を積極的に受け入れている場合は一般の病院よりさらに一段低いようです。同じ地域の診療科別では内科、小児科、耳鼻科、整形外科などが厳しい状況です。
新型コロナによる経営への影響は2月の時点では目立ちませんでした。しかし3月に入り、都市部などで感染が拡大すると医業収入が一気に下がりました。おしなべて例年より2割弱ほど減少した印象です。外出制限が始まった4月はさらに落ち込み、そうした状況が5月も続いていると認識しています。
―感染症指定医療機関などでは業務過多の深刻さが指摘されています。
患者さんの受け入れを制限する病院が多いので、単純な患者数としての業務量の増加は限られています。しかし実際には、防護服を毎回着たり脱いだりしますし、院内感染を避けるための動線を意識したり、自分を介して家族やほかの患者さんに感染を広げないか常に緊張を強いられたり、物理的な面とストレスの両方の要素で業務過多になっていると認識しています。
外来需要、完全には戻らない
―緊急事態宣言が解除されれば状況は好転するでしょうか。
ありがたいことですが、先生方と話しているのは、特に外来医療への需要が完全に戻ることはもうないだろうということです。手洗いやうがいを徹底する意識が広がったのが一つです。風邪や胃腸炎などで体調を崩せば医療機関を受診するのが“常識”でしたが、今回の混乱で「自宅療養で十分だ」という意識に転換しつつあると感じています。
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