2020年度診療報酬改定では、病院の「両極化」が進む―。
2月7日の中央社会保険医療協議会(中医協)・総会では答申が行われ、個別の点数が示された。「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)において、認知症患者の受け入れを評価する「A1点・B3点」が削除され、C得点が重視された。そして、地域医療体制確保加算(520点)を新設。適切な労務管理などを前提に年間2000台以上の救急車等を受け入れる急性期病院が評価された。
対談では、国立大学病院長会議の山本修一会長(千葉大学医学部附属病院・病院長)と、井上貴裕氏(同院・副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長)が20年度改定で踏まえておくべきポイントや、今後大学病院に求められることなどを話し合った。【司会・構成、大戸豊】
対談は2020年1月20日に実施。答申を受けて一部内容を修正した。
山本修一氏(左)と井上貴裕氏
筆者の井上貴裕氏が塾長を務める「ちば医経塾」が第3期生を募集中【2月末まで】
■地方の中小病院で2000台は厳しい
―2020年度診療報酬改定の議論で注目しているのは。
山本 医師の働き方改革の一環として、過酷な救急の現場を守ろうと、救急実績が一定水準以上の病院が評価される(地域医療体制確保加算のこと※)。
年間2000台以上の実績が求められるが、救急車の取り合いになるかもしれない。
井上 救急医療全体を評価するなら、重篤な患者の受け入れを評価する救急医療管理加算で、全ての病院を対象にするなどの対応もあるが、医師の働き方を見直す視点だと、そうはいかないのだろう。
また、救急車の受け入れが多い病院は、別に補助金をもらっている。もらっていない病院から、「不公平だ」という不満が出るのでは。
※2月7日の答申では「地域医療体制確保加算」(520点)が示され、救急車等の搬送件数が年間で2000件以上が実績要件とされた。また、救急搬送看護体制加算も加算1(400点)と2(200点)に分けられ、加算1は実績要件として、救急車等の搬送件数1000台以上、救急患者の受け入れの対応に係る専任の看護師を複数名配置することが求められた。
山本 18年度改定では、看護必要度で認知症患者の受け入れに配慮し、A得点が1点でも該当患者になったが、20年度改定では、A得点のハードルも上がる※。さらに、手術を評価するC得点の評価対象が増え、対象となる日数も延びるなど、高度急性期が評価された形だ。「バリバリの急性期」からすると、当然の基準だが、全体的に見ると混乱が起きるかもしれない。
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