医療・介護業界で必要な最新のビジネス実践知
多摩大学大学院で“知の再武装”を
JR品川駅港南口から徒歩1分の品川インターシティフロント5階のフロアの一室で、社会人が医療の知識を深めたり、業界の課題について意見を交わしたりしている。その顔触れは、医療や介護関係者のほか、民間企業に勤める人や公務員などさまざま。日本の医療や社会などに関して、問題意識を持っている人がほとんどだ。
そこで行われているのは、多摩大学大学院の授業で、MBAの取得を目指す社会人の学びの場となっている。授業時間は、平日が午後6時30分から午後9時40分まで、土・日が午前9時から午後4時10分までが中心だ。
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授業時間は1講義3時間だが、授業が終わっても院生がすぐに帰らないことが多い。興味深いアイデアや自分の知らない分野の話などを紹介した人に対し、授業時間内に聞けなかったことを質問したり、自分の意見を述べたりする院生が少なくないからだ。
多摩大学大学院がMBAコースを開設して、20年以上が経つ。これまでに750人以上の社会人が2年間の同コースを受講。勉強したことをそれぞれの仕事で生かしている。
同コースの特徴は、少人数クラス制を採用していること。1科目の平均受講者数は10.6人(2017年秋学期)と少人数だからこそ、一人ひとりの意見を聞き、議論を深める時間が持てる。また、異業種・他職種が集まっているのも特徴だ。院生がそれぞれの分野の立場から発言することで、他の院生は刺激や新たな気付きを得られるといったメリットがある。
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■「授業が生き物のようで面白い」
18年度には、同コースに約100のカリキュラムが設置される。このうち、「最新ビジネス実践知/ヘルスケア」の分野で3講座を担当するのが真野俊樹教授だ。真野教授は、名古屋大学医学部を卒業し、臨床医などのキャリアを積んだ後、米コーネル大学医学部研究員を経て、英レスター大学でMBAを取得。日本の社会保障制度にも精通しており、マネジメントやイノベーションの視点を踏まえ、表層的な医療・介護の知識ではなく、世界最先端のベストプラクティブとビジネスモデルを探究し、専門性の深化を図る改革を医療・介護業界に提案している。
「社会性を重視した授業の構成になっているので、社会的な要素が強い仕事に携わる医療者にとって相性がいいと思います」―。真野教授は、他の業種に比べて「非営利」の要素が強い医療にかかわる人が同コースの授業を抵抗なく受けられるのではないかと考えている。
また、MBAコースではデジタル経営の分野にも力を入れており、真野教授は「データに基づいたヘルスケアを勉強したい人には最適」と受講を勧める。
真野教授の授業には毎回、10人前後の院生が参加。メンバーによって議論の深まりや方向に違いが生じるので、「授業が生き物のようで非常に面白い」(真野教授)。専門性の高い仕事に就く院生の議論では、真野教授も新たな知識を得られることがあるという。
MBAコースの次の入学期は今年4月。既に出願を受け付けており、出願の締め切りは2月26日(月)だ。真野教授は受講を検討している人に対し、「社会性を重視するという理念を持った上で、もう少し知識を深めたいと思っている人がヘルスケア分野に多いと思います。当大学院のMBAコースで、そのニーズにマッチさせたいです。もちろん、医療などに直接関与していない一般の人も受講が可能です」とメッセージを送る。
■「30年先も現役でいるために今勉強」
17年9月、多摩大学大学院の同コースに入学した二宮宣文さんは、南町田病院(東京都町田市)の院長だ。病院の経営に携わるうち、二宮さんはさまざまなことを勉強したいという意欲がわいてきたという。
二宮さんが同コースを選んだ一番の理由は、真野教授が講師を務めることだ。「インターネットで講師陣を調べたら、真野先生の名前がありました。以前から真野先生のことを知っていましたので、すぐに決めました」(二宮さん)。
二宮さんが学んでいるのは、マーケティングやデータベースの構築など。特にマーケティングに関する授業では、ビジネスで世界的に成功している企業の戦略などを講師が詳しく紹介してくれるため、二宮さんは「今までとは違う視点で医療経営について考えられるようになりました」と効果を実感している。また、真野教授の授業を受けることにより、「1だった知識が10になりました。ビジネス分野で卓越した実績と実務経験を持つ、多彩な講師がいるので、これまでよりも数倍、脳が活性化しています」と話す。
二宮さんは現在68歳。目標は「生涯現役」の医師でいることだ。「30年先も現役でいるために、今勉強しなければなりません。生涯現役でいたいです」。こう語る二宮さんは、南町田病院を健康な地域住民のコミュニティーの中心地にしたいと考えている。人生100年時代―生涯学習時代に向けた大学改革の最先端教育(リカレント教育)の拡充に完全対応している多摩大学大学院とのマッチング(出会い)は、さらなる財産となるようだ。
■学ぶうち、「面白い」と思うように
同じく17年9月に入学した高橋康之さん(47)は、横浜市役所の職員。現在は横浜市立脳卒中・神経脊椎センターで、地域医療連携業務を行っている。同市では毎年、職員の1人に医療政策を学ぶ機会を与えており、17年は高橋さんがその1人に選ばれた。
高橋さんは、医療政策のほか、ビジネスデータの分析や経営戦略、クリティカル・シンキングなどの授業を履修。「最初の2カ月間は授業に付いていくのに大変でしたが、3カ月目ごろから突き抜けたような感じが出てきました」と高橋さん。新しいことを学ぶのは苦しいが、2、3時間くらい同じことを考え続けるうち、次第に気分が高揚し、「苦しい」から「面白い」との思いに変わってきたという。
同コースについて、高橋さんは「各分野の最前線で活躍されている方がビジネスだけでなく、大学院で講義しているのが特徴です。最新の知見をふんだんに取り入れた授業の構成になっていることもありがたいです」と強調する。
医療や介護などの分野でも将来、AI(人工知能)などを使ったイノベーションが起きると見込まれている。高橋さんは「多摩大学大学院で学んだことを生かし、新しい切り口による政策的な提案などにつなげたいです」と抱負を述べる。
■修了後は「構想を練るプロジェクトに取り組みたい」
「インターネットで学ぶ大学院や大人数による授業を展開する大学院の体験講義などを幾つか受けましたが、少人数できちんとディスカッションできるのがこの多摩大学大学院MBAコースでした」―。製薬企業アッヴィ合同会社の薬剤師の時本敏充さん(48)は、同コースの受講を決めた理由をこう話す。時本さんがMBAを取得しようと思ったのは、職場で必要性を感じたからだ。
「最近はマーケティングにかかわる仕事もしています。その際、専門家の話が理解できない場面も何度かありました。自分が十分に理解できないと部下に迷惑が掛かると考え、MBAを取ろうと思いました」(時本さん)
17年9月から同コースの受講を開始した時本さんが、現在学んでいるのは主にデータベースの構築だ。「さまざまな分野の外部講師の話も聞けるので、ものすごく刺激を受けています。視野が広がってきたと感じています」と時本さんは効果を口にする。
時本さんには、同コースで得た知識を生かして実現させたいプロジェクトがある。「医薬品の服用による副作用を最小限に抑える方法は、現在では限られていますが、データベースの構築や分析の知識を使って、他の方法が見つけられるかもしれません。大学院を修了したら、構想を練っているこのプロジェクトに取り組みたいです」。時本さんは目を輝かせて、夢を語った。
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