薬局を譲渡したのは理想追求のため
M&Aのかたち・ケース1
1月ごろは、新店舗を開局する依頼があったのですが、新たな人員が採用できなかったのでお断りしたところでした。当時、金融機関からの融資は十分に受けられる状態でしたし、薬剤師をさらに確保する意味でも、他社を買収することを検討していました。しかしその後、数人の薬剤師の退職が重なってしまい、このまま同じサイクルを繰り返すと、地域に根差した薬局をつくったり、レベルの高い薬剤師を育成したりすることに集中できないと感じていました。
そこで、キャリアブレインのスタッフに相談したところ、M&Aも一つの解決策になり得ると提案してくれました。5年間経営してきた会社を譲渡するというのは、さぞ大きな決断だっただろうと思うかもしれませんが、何よりも、やりたいことを追い求めることができる環境が大事だと判断しました。だから、そこまで悩まなかったですし、わたしはこれを「大きな決断」とはとらえていません。
ファーマホールディングの親会社であるメディカルシステムネットワークは、東証1部上場企業でありながら、レジオンと同様、地域に根差した薬局をつくるというのを理念にしています。今よりも大きな組織で、より多くの人を相手に仕事をすれば、より大きな成果が上がると思ったのです。特にスタッフの教育に携わり、レベルの高い薬剤師を育成する仕事に注力したいです。「なの花薬局の薬剤師を雇いたい」とどの薬局からも思われるような、質の高い薬局をつくっていきます。
M&Aから約1か月半が経過し、少しずつではあるが、これまでと環境が変わってきている。不慣れな業務体制に戸惑うスタッフも見受けられるというが、新しいことに好んで挑んできた村松社長は、「なぜM&Aをしたのか、職員には5年後、10年後に分かってもらえればいい」とし、その目は常に先を見据えている。
これまで、薬局運営にかかわることはすべてわたしが決めてきましたが、体制が変わった当初は、例えば事務スタッフらがどこに判断を仰いでいいのか分からず、戸惑っている場面もありました。しかし、まだ1か月半しか経っていませんし、慣れてくれば解決する問題ばかりだと思っています。
薬剤師は保守的な人間が多く、新しいことをやるのを嫌う傾向にあると思います。しかし、わたしは、「マグロやカツオのように、止まると死んでしまうのではないか」と言われるほど、変化を求めていく人間です。福利厚生なども良くなりましたし、職員らには、M&Aをしてよかったということが何年後か、5年後、10年後にでも気付いてもらえればいいと考えています。
厚生労働省は今、地域包括ケアシステムの構築に向けて取り組んでいます。薬局はその流れからはじき出されることなく、主役の一つになっていかなければなりません。薬局が患者さんのセルフメディケーションをサポートし、医療機関を受診する前のゲートキーパーの役割を担っていくことで、医療費の削減に貢献すべきです。これを推進するため、薬局薬剤師らは、自分たちの取り組みの成果をデータ化して国に見せ、アピールしていくべきだと思います。
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