安全に楽しめる調理済み介護食を追求するベネッセパレット
祝田社長と菊谷顧問が開発を振り返る PR
■「きざみ食」を2月から新たに投入、3つ目の柱として期待
株式会社ベネッセパレット(東京都新宿区)は、2024年4月1日からベネッセグループの高齢者施設以外へ完全調理済み介護食の販売を開始した。当初は「ソフト食」「ミキサー食」のラインナップだったが、安全性を確保しつつ、できる限り食感を残せる大きさを食材ごとに工夫した「Neoきざみ食」を新たに投入。「Neoきざみ食」は、介護食3つ目の柱として期待を込める。高齢者施設の利用者にとって食事は最大の楽しみのひとつ。こうした利用者の思いに応えるため、介護現場では食事への創意工夫を日々重ねる。その一方で、人手不足に苦しむ介護現場。利用者の“食の楽しみ”と介護現場での”人手不足対応“の2つを追求し、工場で生産する完全調理済み介護食の開発・販売を続けるベネッセパレットの思いを、祝田健社長(25年3月末現在)と顧問で日本歯科大学教授・口腔リハビリテーション多摩クリニック院長の菊谷武氏が語り合った。
■10年来の取り組み
祝田氏 ベネッセパレットでは15年ごろから、かむ力や飲み込む力が弱くなった方でもお食事を楽しんでもらえるよう、「食べやすさ」「見た目のおいしさ」にこだわった調理済み介護食を提供してきました。さらに、健康を考えた季節感ある献立を、1年を通じ毎日提供することを大切にしています。
福祉・医療現場の最前線の声である「介護食準備の手間を軽減したい」「介護食の栄養価を底上げしたい」「ご利用者の食事満足度を上げたい」に向き合いながら商品開発を行い、完全調理済み介護食を自社工場で製造しています。
私は社長を18年から務めています。菊谷先生には私が有料老人ホーム運営や介護事業を手掛ける株式会社ベネッセスタイルケアに勤務しているころから、施設での食事指導に関わってもらっています。
菊谷氏 高齢者の食事は、窒息の危険と隣り合わせです。入居初日に窒息を起こした方もいました。入居前の状態確認の際には「普通のものを食べている」というお話でした。ですが、実際は相当にやわらかいものを食べられていて、さらにはかむのが難しいものは避けていたそうです。入居者と施設側とで「普通」という認識にズレがあったためです。
有料老人ホームは、入居者の健康状態の幅が広いのが特徴です。食事についても私たちと変わらない人もいれば、かなり配慮したものを食べている人もいます。私の意見でアセスメントの取り方も変えましたし、現場ごとに判断が違っていたものは基準を作り統一しました。
12年に日本摂食嚥下リハビリテーション学会で、ようやく介護食の基準が示されました。薬に関して言えば、処方箋があればどこに住もうが同じ薬を服用できます。ところが食事はそうはいきませんでした。例えば病院から老人ホームに移ったら大変でした。「やわらかい食事」といっても、担当者によってイメージが異なります。
私がベネッセスタイルケアに関わらせていただいて長くなりますが、組織的に施設でのお食事提供に関する様々な取り組みを続けてこられており、私もそこにかかわり、その中で、介護食の底上げにつなげることができたと感じております。
祝田氏 特別養護老人ホームではいわゆる普通の人が食べるような通常食を食べている方は、今は入居者の1-2割です。基本的には食材を細かくします。かなり細かくした「きざみ食」、ペースト状の「ミキサー食」が普通の食事になってきました。私が社長として指揮をとり始めた18年からは、通常食ベースに考えるのではなく、やわらかめに調理した「ソフト食」を中心に、今の高齢者に合った商品開発を展開してきました。
ベネッセパレットでは15年に調理済み介護食の販売を始めましたので、今年でもう10年です。この節目に外部販売を始めました。これまで自社グループのみに卸していたのですが、ある病院から商品のリクエストがあり、数年前にサンプルでゼリー状のおかゆ「ゼリー粥」を送りました。これをきっかけに事業化の検討が始まりました。
おいしいソフト食・ミキサー食~介護施設・病院向け~|
菊谷氏 楽しみである食事の時間ですが、咀しゃく機能や嚥下機能の低下などにより不慮の事故につながる恐れもあります。入居者の形のある食べ物を食べたいという希望にすべて応えるというのは、なかなか難しいことです。
祝田氏 本当にその通りでして、食材の食感を残すことは非常に難しいのですが、今回、「Neoきざみ食」を投入し、安全と楽しみを両立した食事に菊谷先生のご協力のもと挑戦しています。
■安全確保と効率化を達成
菊谷氏 「Neoきざみ食」の開発については、これまでで一番ベネッセパレットとやりとりしました。最初の試作品を持ってこられたときは技術とかいろいろ考えれば、もっと楽しい食事が提供できると考えたので、「全部やり直し」と伝えました。ミキサー食を食べている方たちの次に配慮が必要な層向けの食事は確かに難しい。「現地できざむ手間を削減し、食感など楽しみを追求できる人たちに向けた食事」というコンセプトで私に持ってこられたのですけど、ミキサー食の状態に寄りすぎていた。
調理の食感にこだわった理由としては、介護の現場でミキサー食やソフト食が中心でも、一食の中で一品だけでも形あるものを出す努力が現場で始まっているからです。一小皿だけでも形あるもので食べてもらったら、すごい満足が得られるのは分かっているけど、現場での対応はあまりにも複雑で、できないことが多いのです。
祝田氏 きざみ食を作る場合まずは、食材をミキサーにかけるのですが、素材それぞれの特性に応じて、どこまでかけて食感を残すかという時間面を見直しました。かぼちゃであれば短時間でも液体状になります。豆ですと相当かけないといけません。きざみ食については菊谷先生の意見を基に、一個一個の食材について、再度見直しました。異なる食材を組み合わせたら何十通りもあります。例えば「ひじきと豆だったらこのくらい」というように意識してやります。
今回挑戦した「Neoきざみ食」というのは、現場の調理師たちが、「食感あるものを食べたい」という入居者の要望に応えるために作った料理をイメージしています。ただ、現場の調理師では人によって判断基準が異なります。それでは窒息のリスクがあるので、安全を担保したものを自社の製造技術を駆使して工場で作ることにしました。食感を楽しむ新しいきざみ食という意味をこめて「Neo」を頭につけ「Neoきざみ食」として25年2月1日から販売をスタートしました。
その前に入居者60人くらいのホームで評価してもらっています。当社の完全調理済み介護食によって、厨房の工程が従来調理の3分の1になったと報告がありました。厚生労働省の「第9期介護保険事業計画」における試算では介護業界は40年度には約57万人働き手が不足すると予測されており、人手不足対策にもなります。当社の介護食全体で100種類以上メニューがあり、献立にすると28日サイクルで提供できます。
菊谷氏 「Neoきざみ食」の利用は安全面だけでなく、調理の手間が省けて生まれた余裕を利用者に向き合える時間に使えるようになるという面でも大きいです。
祝田氏 食事に対する入居者のこだわりを叶えたい。ベネッセパレットの介護食というのは、介護者の入居者への思いをしっかりと支えるということです。
日々、入居者を支える人に、完全調理品であるミキサー食、ソフト食、そして「Neoきざみ食」を提供していきます。今後は、おせちなど行事に合わせた介護食も進めていきたいと考えています。
おいしいソフト食・ミキサー食~介護施設・病院向け~|
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