薬局と医療機関との連携推進、対人業務充実で重要性増す
入院時の薬局からの支援、望む医療機関が7割超す
対人業務評価を中心とする調剤報酬体系への転換が進められている中で、重要な要素となっているのが、医療機関との連携です。2022年度診療報酬改定でも、調剤に関しては、薬局での退院時共同指導料の算定回数が少ないと指摘された一方で、医療機関との連携に基づく対人業務の評価新設や充実が9項目に達しました。この流れは次回改定でも続き、薬局は、医療機関との連携を踏まえた取り組みがますます求められていきます。
※この記事は「薬局経営NAVI」とのタイアップ企画です
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1.薬局の退院時共同指導料算定回数わずか164回
薬局の退院時共同指導料(600点)の算定回数が少ないと指摘されたのは、22年度診療報酬改定に向けた中央社会保険医療協議会・総会での調剤に関する2回目の議論の場です。
厚生労働省は、提出資料で、毎年6月審査分の算定回数の推移を示し、14年61回、15年44回、16年81回、17年87回、18年142回、19年164回、20年91回となっており、「20年度を除き増加傾向であるが、多くない」としました。
全国6万余りの薬局の1カ月の算定回数が、160回程度ではいかにも少ない数字です。20年はコロナ禍で大幅に減少し、直近の21年はやや回復したものの123回です。
退院時共同指導料は、入院患者が在宅療養に移行する場合に、入院している医療機関から在宅療養を担当する医療機関や歯科医療機関、薬局、訪問看護ステーションなどの医師や歯科医師、薬剤師、看護師などの参加を求めて、在宅での療養に必要な説明や指導を行う場合を評価するもので、入院中の医療機関と在宅療養を担当する医療機関などがそれぞれ算定できます。
その薬局の算定回数が実際にどの程度少ないのかを、医療機関側の退院時共同指導料の算定回数と比べてみます。
コロナ禍前の19年は、入院患者のいる医療機関が算定する退院時共同指導料2(400点)は5,826回、また、退院後の在宅療養を担当する医療機関の医師や看護師など、歯科医師や歯科衛生士、薬局薬剤師、訪問看護ステーションの看護師などのうち3者以上と共同して指導した場合の多機関共同指導加算(2,000点)は1,350回です。
多機関共同指導加算は、薬局薬剤師が参加した場合が含まれていて、それが1,350回算定されているのですが、薬局の退院時共同指導料の算定回数は164回で、12.1%でしかありません。
入院患者のいる医療機関で多機関共同指導加算が算定された1,350回のうち、薬局薬剤師が参加していたのは164回でしかなかったというのがこのデータです。
薬局薬剤師が参加すべき事例は、1,350回の全てではないにしても、参加が求められるべき事例はまだ相当数あるのではないかと推測されます。
さらに、多機関共同指導加算だけでなく、入院患者のいる医療機関が算定する退院時共同指導料2の算定回数5,826回の中で、多機関共同指導加算の対象になり得るケースがより多い可能性、また、退院時共同指導料2の対象になり得るケースが今後より多くなっていく可能性も考えられます。
2.要件拡大し薬薬連携を評価、ビデオ通話も緩和
22年度の調剤報酬改定では、薬局の退院時共同指導料の算定要件の見直しが行われ、患者が入院している医療機関側の共同指導への参加職種に薬剤師が加えられました。医療機関の退院時共同指導料の要件では、すでに参加職種に薬剤師も位置付けられており、それに合わせて薬局側の要件を拡大したのです。
同時に、ビデオ通話による共同指導への参加についても、それまでは医療資源の少ない地域であることとしていた要件を外す緩和を行いました。
退院時共同指導での病院薬剤師と薬局薬剤師との連携、薬薬連携が点数評価され、ビデオ通話による参加も制限がなくなったことから、薬局の退院時共同指導への参加がしやすくなりました。算定回数も増加していくと見込まれます。
3.医科の退院時薬剤情報管理指導料と連携加算
退院時共同指導料と関連して、入院患者のいる医療機関が算定できるものに、退院時薬剤情報管理指導料(90点)があります。患者の入院時に服薬中の医薬品について確認し、入院中に使用した主な薬剤名を患者の手帳に記載した上で、退院時に患者または家族に指導を行った場合に算定します。
さらに、入院前の内服薬を変更または中止した患者について、保険薬局に対して、その理由や患者の状況を文書で提供した場合には、退院時薬剤情報連携加算(60点)が算定できます。
入院時の服薬中の薬剤の確認は、患者や家族から聞くこともできますが、薬局に照会する場合もあります。一方、退院時薬剤情報連携加算は、保険薬局に文書で情報提供することが必須要件です。
また、退院時薬剤情報管理指導料は、退院時共同指導料2を算定し、その指導を薬剤師が行った場合には算定できません。この規定からも、2つの指導料は密接に関連していることが分かります。
医療機関による退院時薬剤情報管理指導料の算定回数は、19年で23万4,353回とかなり多くなっています。コロナ禍の20年は19万6,997回と16%落ち込みましたが、21年には22万5,924回まで戻しています。
退院時薬剤情報連携加算は20年度改定で新設されたもので、20年は6,505回算定され、管理指導料の3.3%でしたが、21年には8,546回へと31%増加し、管理指導料に対する割合も3.8%に上昇しました。
一方、医療機関の73%が、入院時に薬局に担ってほしい支援があるとの調査結果があります。中医協・診療報酬改定結果検証部会が20年度改定後に実施した調査で、具体的には、▽普段の服用状況、副作用の状況などの情報提供(84%)▽持参薬の整理(76%)▽重複投薬などの有無の確認(72%)-となっています。
しかし、入院時に持参薬の整理を薬局に依頼することがある医療機関は17%にとどまり、83%は依頼していません。
依頼しない理由は、「自院の薬剤師(薬局)で整理するから」が57%と多い一方で、「薬局が対応可能かどうかわからないから」が39%ありました。
持参薬の整理は、現状では自院の薬剤師が実施することが多いものの、可能なら薬局で担ってほしいという医療機関が73%に達しているのが実情です。
しかし、薬局との連携が取れていないためか、薬局側の対応が分からないので依頼していない医療機関が39%、約4割もあるのです。
薬局から医療機関にアプローチすることも求められているのではないかと考えられます。
4.服薬情報等提供料は医療機関からの求めで1.2万回
医療機関からの求めに応じて薬局から情報提供する場合については、服薬情報等提供料の算定状況で見ることができます。
服薬情報等提供料1(30点)が医療機関からの求めに対応するもので、22年度改定以前は入院予定患者に関する場合も含まれていました。
その19年の算定回数は、1万2,587回です。薬剤師の判断または患者・家族からの求めに応じる場合の服薬情報等提供料2(20点)も1万8,896回あります。2でも、薬剤師の判断で医療機関に情報提供する場合があります。
医療機関の求めに応じて入院予定患者の情報を提供する場合については、22年度改定で服薬情報等提供料3(50点)が新設されました。その算定状況はまだ出ていません。
これまでの服薬情報等提供料1の算定回数から見て、医療機関から薬局に対して患者の服用状況などの情報を求めるケースが一定程度あることは明らかです。
そうした機会を通じて、退院時共同指導への参加、入院時の患者の持参薬整理などの対応が可能なことを、薬局として伝えておくことも重要な活動だと思われます。
5.連携を要件とした対人業務評価、22年度改定で9項目
22年度の調剤報酬改定で、評価の新設や充実、また要件緩和などが対人業務として多くの項目で行われました。特に、医療機関からの指示または医療機関への情報提供など連携を要件としたものが、9項目に達しています。
退院時共同指導料、リフィル処方箋、調剤後薬剤管理指導加算、外来服薬支援料2、服薬情報等提供料3、服用薬剤調整支援料2、地域支援体制加算、調剤管理料の調剤管理加算、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料です。
外来服薬支援料2は、調剤料の廃止に伴い、調剤料の一包化加算からの組み換えで、薬学管理料の中で新設されました。従来の一包化加算の要件に対し、「処方した保険医に当該薬剤の治療上の必要性及び服薬管理に係る支援の必要性の了解を得た上で」が追記されました。
調剤管理料の調剤管理加算も、調剤料の廃止に伴い、薬剤服用歴の管理を評価するものとして薬学管理料に新設された調剤管理料に対する加算です。複数の医療機関から6種類以上の内服薬が処方された患者が対象で、施設基準で重複投薬などの解消の実績(服用薬剤調整支援料を過去1年間に1回以上算定)が設定されています。重複投薬の解消には処方医との連携が必要です。
調剤管理料自体に医療機関との連携の規定はないものの、この加算と重複投薬・相互作用等防止加算では連携が必要となります。
地域支援体制加算は調剤基本料に対するものですが、対人業務に関わる医療機関との連携体制と実績を評価しています。その要件が緩和され、薬局は、取り組みやすくなりました。
これら9項目のうち地域支援体制加算以外は、全て薬学管理料の項目です。対人業務評価は、基本的に薬学管理料の項目となります。
その対人業務評価では、医師の指示、あるいは薬剤師からの照会や確認、事後の情報提供など、何らかの形で医療機関との連携が必要とされています。
次回診療報酬改定以降も、調剤に関する評価の新設や充実、要件緩和などが図られるのは、対人業務が中心です。医療機関との連携が要件となる評価項目がますます拡大し、薬局として、医療機関との連携を踏まえた取り組みの重要性が増していきます。
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