介護事業者や医療法人の新規事業に運動療法型の障害者デイ
アニスピホールディングス・藤田英明代表
日本介護福祉グループで小規模デイサービス「茶話本舗」を立ち上げ、現在は障害者グループホームやデイサービスを運営するアニスピホールディングスの藤田英明代表は、新型コロナウイルスにより「通所介護事業所は利用者さんの通所控えで大きな打撃を受けた」と振り返る。
藤田代表は介護保険サービスのみを提供する「1本足打法」からの脱却を推奨し、医療・介護事業者に「コロナ禍を機に、通所介護と親和性の高い障害福祉サービスである生活介護にも目を向けてほしい」と呼び掛けている。【井上千子】
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■通所介護と生活介護、相違点とは?
藤田代表は通所介護事業所のコロナ後の展開として3つを挙げる。
一つが通所介護事業の継続、二つ目が通所介護に障害福祉サービスを加えた「共生型サービス」、三つ目が通所介護から障害福祉サービスへの移行だ。
「共生型サービス」に関しては、2017年の介護保険法改正により、デイサービス、ホームヘルプサービス、ショートステイを運営する介護保険事業所であれば、障害福祉サービス事業所の指定も受けやすくなる特例が設けられている。
障害福祉の通所サービスには、就労移行支援や就労継続支援、生活介護などがあるが、藤田代表は通所介護事業所の場合、「同じ通所サービスの中でも、生活介護はアプローチしやすい」と言う。
藤田代表は、「通所介護と生活介護の人員基準、運営基準は重複する点が多く、通所介護で働く職員をほぼ生活介護でも移管できる」とその理由を挙げる。
一方、大きく異なる点として生活介護では利用者の個別支援計画書を作成する「サービス管理責任者(サビ管)」の配置が義務付けられている。藤田代表は、「サビ管はケアマネジャーのような役割。介護福祉士など介護施設の職員も取りやすい資格」と言う。
また、通所介護では利用者と介護職員の割合は5対1だが、生活介護では利用者の障害支援区分に応じて6対1から3対1まで割合が変わる点も異なる。
さらに、生活介護では訓練・作業室の設備基準は「支障がない広さ」となっており、通所介護のように平方メートル単位の指定はない。
■障害者の親の高齢化が深刻に、8050問題
アニスピホールディングスの西本未里取締役は「生活介護へ参入を検討するデイサービス事業所からは『利用者さんの集客に苦戦しており、生活介護サービスも難しいのでは』といった声をよく聞く」と話す。
ところが、「弊社の場合、生活介護を新設すると半年でほぼ定員が埋まる」といい、ニーズの高さを実感しているという。
その背景の一つに、引きこもりの中高年を高齢の親が支える「8050問題」が挙げられる。最近では、知的、発達、精神障害のある50代の子どもを、80代の親が介護する「8050問題」も課題となっている。
中には引きこもった子どもからの暴言や暴力に悩む70-80代の親から相談を受けるケースもあるといい、「高齢になり障害のある子どもの介護が難しくなったり、親が亡くなったりと、受け皿となる障害福祉サービスへのニーズが高まっている」と藤田代表は指摘する。
■障害福祉サービスに創意工夫を、新しい生活介護施設立ち上げへ
国民健康保険団体連合会(国保連)のデータによると、生活介護利用者の1カ月平均は16年に27万656人を突破した。それとともに生活介護事業所も年々増加傾向にある。
一方、財務省の16年度調査によると、営業時間が6時間以上で減算の対象となっていない通所事業所のサービス利用者を対象に、利用時間を調べたところ、実際には6時間以下にとどまっていたケースが約5割に及ぶことが分かり、通所事業所の短時間利用の実態が浮き彫りになった。
これに対し、藤田代表は「障害福祉サービスはまだ競争意識が薄い。サービス提供側も創意工夫を重ねず、利用者ではなく事業所にとって都合が良い判断をしてしまう」と指摘する。
「障害福祉は障害支援区分だけではなく、高齢者より利用者の年齢層も幅広い。うちでは15歳から亡くなられる年齢までの利用者がいる。だからこそ、個々の利用者に合わせた支援が必要」と語気を強める。
「18歳の利用者も一緒くたに塗り絵をさせることで、何の機能回復に役立つのだろう」と、従来の生活介護に疑問を感じていた藤田代表。
「介護保険のように、利用者にとって優れた支援をする事業所が生き残ってゆく。その流れを障害福祉サービスの生活介護にも持ち込みたい」-。
そう考え、20年の7月、従来の生活介護施設にはなかった運動療法中心の生活介護サービス「ワーカウト」の第一号店を千葉県船橋市に立ち上げた。
■「運動は一つのきっかけ」 運動療法型生活介護に込められた思い
しかしなぜ、運動療法に特化したのか。
「ワーカウトの利用者は知的、発達、精神障害者が多いのですが、これら障害をベースに周囲との疎外感や生きづらさを感じ、引きこもりになってしまったケースも多い。引きこもると運動量も減り、身体機能も衰えていきます」(藤田代表)。
ワーカウトはフィットネス企業と連携し、職員以外に現役のアスリートも交え、キックボクシング、ピラティス、ファンクショナルトレーニングと3つの運動を提供している。
キックボクシングで全身運動をした後は、ピラティスで自律神経を整え、体幹を強化。ファンクショナルトレーニングで主に「立つ」「座る」「歩く」「走る」といった日常生活で重要な機能強化を図る流れだ。
一方で、藤田代表は「運動は一つのきっかけ」と言う。
「最終的な目的は自信を取り戻すこと。利用者は夢中でサンドバッグをたたいたり、蹴ったりするうちに『気持ちいい』って感じる。気持ちよさから自発的に運動を続けていくと、だんだんと身体が動くようになって、ある時『あれ、身体が動くじゃん』って気付く」(藤田代表)。
「ワーカウトに来る利用者は、引きこもりから自信を喪失している人も多い」といい、運動療法による筋力や体力の向上が利用者の自信回復に一役買っている、と藤田代表は考える。
■医師がオーナーのフランチャイズ1号店オープン
アニスピホールディングスは現在、ワーカウトのフランチャイズ加盟店を募集している。
加盟金は700万円(税別)で、ロイヤリティとして毎月の売り上げの8%を支払う。そのほか、トレーニング用品といった設備・備品などが初期投資として必要だ。
また、障害福祉サービスではサービス提供をした事業所は原則9割を国保連に請求するが、介護保険制度と異なる手続きに戸惑う介護事業者も少なくない。
フランチャイズ加盟制度では、専属のスーパーバイザーが給付請求手続きのほか、障害福祉サービス事業所の指定申請といったサポートも行っている。
21年4月1日には、医師がオーナーを務めるフランチャイズ加盟店1号店が千葉県松戸市にオープンした。「最近の若いドクターは投資意欲が高い」と藤田代表。医師や医療法人からの問い合わせも増えているといい、現在、見学会や体験利用を受け付けている。https://anispi.co.jp/president_blog/post-4007/
「通所介護を続けるのもいいが、その時代ごとに新たな業態に変換する方が会社として生き残れるのではないか」と藤田代表は考える。
「『障害福祉領域は分からない』という介護事業所は多い。医療・介護関係者は障害福祉への理解も早く、まずは興味を持ってワーカウトの説明会を聞きに来てほしい」と呼び掛けている。
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