コロナ禍で使い捨てタイプの医療用吸引器の需要増
医療機器メーカー三幸製作所が新商品投入
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、患者さんの痰や唾液、鼻汁などを吸い出す吸引器の中でも使い捨て(ディスポ)タイプの需要が伸びている。
各社が新製品を投入する中、医療機器メーカーの三幸製作所(さいたま市)は従来の形状とは異なり、横に取り出し口が付いた商品に打って出た。しかし、ガスの漏れやすい形状に開発は難航。試行錯誤の末どのように新商品にこぎ着けたのか、同社の秋本修之さんと斉藤隆寿さんにお話を伺った。【井上千子】
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■感染リスクを抑えたい、使い捨てタイプの吸引器が人気に
一般的に病棟で使われる壁掛吸引器には、使い捨てのディスポーザブルタイプ(ディスポ)と洗浄して繰り返し使うリユースタイプの2種類ある。
リユースの場合、廃液をためる容器を洗浄する必要があり、これが飛散・感染リスクにつながりやすいとして、新型コロナ禍では敬遠されがちに。
そこで着目したのがプラスチック製の吸引バッグにたまった廃液を捨てるだけのディスポだ。従来はリユースよりコスト高であるため、導入する病院も限られていたが、感染対策の高まりを受け、幅広い病院でニーズが増加した。
■背の低い看護師では取り出しにくかった従来タイプ
三幸製作所は感染拡大前から製品開発に乗り出していたが、ディスポの市場の高まりを受け、作業も急ピッチで進んだ。
一般的な壁掛吸引器は上部に開口部があるが、今回投入した新商品はボタンを押すと、側面のドアが開閉するユニークな形状だ。
この背景には現場で聞かれた看護師の声があった。技術部の秋本修之さんは発売元の営業担当から、「吸引バッグを上から引き上げるのは大変」という看護師の声を耳にする。
「多くの壁掛吸引器はJIS規格で設置ハンガーが床から140センチの高さにあるよう求められています。そのため、小柄な看護師さんは上部の開口部を開けて、廃液がたまりパンパンに膨らんだ吸引バッグを引き上げる作業に苦労していました」(秋本さん)
製品デザインを担当した女性デザイナーが同社の従来品を試したところ、「さらに使い勝手の良いものを」と意見が一致。上から引き上げるのではなく、横の開閉ドアから引き出す形状を模索することになった。
■立ちはだかる壁、楕円筒はガス漏れのリスクが増
しかし、ここで難関が立ちはだかった。
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