次代の医療・介護関係者は「知の再武装」を
多摩大学大学院MBAコース
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多摩大学大学院が社会人向けMBAコースを開設して20年余り。すでに750人近い人材が輩出している。同大学大学院の2年間のMBAコースは、少人数クラス制を採用し、MBA取得だけでなく、MBAコースをベースに専門性の高い知識を習得できるカリキュラムになっている。医師をはじめとした医療関係者や、医療機関の事務職のほかに、介護関係者もおり、卒業後には現場の第一線で活躍している。 真野教授は、名古屋大学医学部を卒業、臨床医などとしてのキャリアを積んだ後、米コーネル大学医学部研究員を経て、英国立レスター大学でMBAを取得。現在、多摩大学医療・介護ソリューション研究所長も務め、医療・介護業界に対して、マネジメントやイノベーションの視点で改革を提案している。 同大学大学院MBAコースは、医療・介護関係者である院生が産業界と円滑に連携をしたり、起業したりするきっかけになるよう工夫しており、そのカリキュラムは、行政の担当者や起業家などの外部講師を招いて話を聞いたり、議論をしたりする機会を設けるなど、刺激的な内容になっている。 ■“T型”の「知の再武装」で選ばれる存在に
2月1日(水)、品川サテライトキャンパス「体験講座」の受講者募集
医療・介護関係者の「知の再武装」とは、いわゆるノンテクニカルスキル(Non-Technical Skills)の習得を指す。医療・介護の縦一本線の専門的な知識・技術に対して、横一本線のノンテクニカルスキルがT型となって支え、強靭な「知」のキャリアをつくり上げようとするものだ。真野教授自身が、医学博士であり経済学博士も取得しており、このモデルと言えるかもしれない。また、現場ではチーム医療が定着してきており、そのリーダーとなる人には、医療などのテクニカルスキルだけではなく、マネジメントの知識や能力が必要になってきている。
今、日本の社会構造は、超高齢化で医師や看護師、介護職などほとんどの職種が足りない状態にあるが、団塊世代がすべて後期高齢者になる2025年を乗り越えて、その先の35年ぐらいからは、逆に一部の職種には余剰感が強まることが予想されている。さらに、現場のIT化が進み、人工知能(AI)が積極的に導入されることになれば、医療・介護職、さらには同業界の関係者の中で、テクニカルスキルだけに依存している人たちと、「知の再武装」をした人たちの選別化が始まるかもしれない。
一方、医療・介護保険財政は厳しさの一途をたどり、保険給付範囲は縮小される流れが強まりそうだ。医療・介護業界で必要な知識は、診療報酬や介護報酬に関するものが中心になっているが、業界内で生き残るためには、保険外となる健康寿命の延伸や予防医療・介護予防などのヘルスケア領域の事業に関する知識が必要になってくる。
そこで求められるのは、テクニカルな技術・知識の上に、ノンテクニカルスキルに支えられた幅広い視野があり、医療・介護業界以外にも強いつながりを持ち、かつ連携することができる人材だ。このようなニーズを先取りする形で、多摩大学大学院MBAコースは、「知の再武装」を通じて次代を担う医療・介護業界の人材を育成している。
■授業は少人数で「講義」「ゼミ」「修了(卒業)生・フェロー(研究員)の講演」の3本立て
2月1日(水)、品川サテライトキャンパス「体験講座」の受講者募集
真野教授の授業は少人数制を採用し、「講義」「ゼミ」「修了(卒業)生・フェロー(研究員)の講演」の3本立てになっている。1つ目の「講義」は、教授による最先端の知識を吸収する座学だけでなく、厚生労働省や経済産業省の担当者などを講師に招いて、最新の行政や関連業界の動向などを知ることができる実践に徹底的にこだわった「超実学志向」。医療・介護の問題解決に直結する生きた実践スキル、知恵を学ぶことができる。
2つ目の「ゼミ」は、2年間のMBAコースを4つの学期(セメスター)に分けて、最初の1期を準備期間とし、残り3期を使って課題を選び、それについての議論を踏まえて新たな提案をする。このゼミでは、院生の提案に対して真野教授と、ほかの院生が意見を出し合って、提案を練り直す作業を続けていく。過去の修了(卒業)生の提案が、その後の社会で実現している例は少なくない。
ある医療事務の修了(卒業)生は、勤務先の淀川キリスト教病院(大阪市)と地域を連携させるための「新しい町づくりプロジェクト」を立ち上げている。また、ほかの修了(卒業)生は、医療機関に出入りする人の素養を高めるために、第三者の認証機関による「ヘルスケア産業従事者認証検定」を発足させたり、訪問介護事業を沖縄で立ち上げたりしている。
3つ目の「修了(卒業)生・フェロー(研究員)の講演」では、同大学大学院フェローで、実際に事業を始めている人による、成長モデルやビジネスモデルについての解説などがある。最近では、一般社団法人メディカルツーリズム協会を立ち上げた同協会理事の石塚園子さんや、医療コミュニケーションを推進している、同じくフェローで一般社団法人日本医療面接訓練評価センターの黒岩かをる代表理事が、ビジネスモデルの概要を説明し、院生からの質問を受けた。
■品川サテライトキャンパス「体験講座」の見どころ
多摩大学大学院では2月1日(水)、品川サテライトキャンパスで真野教授による体験講座を開講する(テーマ=ヘルスケア:IT 海外の新しい動きから日本を考える)。そこでは、4月から始まるMBAコースの醍醐味を感じてもらおうと考えている。体験講座を担当する真野教授はこう話す。
「ヘルスケアのテーマはいろいろありますが、イノベーションにつながるという意味で、ITは外せません。私は毎年、米国に視察に行っていて、もう7年になります。米国のヘルスケアの変化には、ITが大きくかかわっています。オバマ大統領による、いわゆるオバマケアには、ITを活用してヘルスケアを改革しようという動きがあります。今、米国ではITを積極導入している病院が増えています。米国のヘルスケアITには、例えば、病院主宰のSNSをプラットホームに患者参加型でコミュニティーができて、患者を緩やかにその病院に誘導する仕組みもあります。体験講座では、これらの動きが日本にどのように波及していくかについて講義するつもりです」 ■MBA取得修了(卒業)生医師、院生インタビュー 多摩大学大学院を修了(卒業)し、MBAを取得した医師や現在、MBAコースを受講中の院生にインタビューした。 【MBA取得修了(卒業)生】
▽千葉中央メディカルセンター(千葉市)消化器センター長・医師、医学博士
長田俊一さん
「起業をしたくて、ここに入学しました。すでに医師を評価するウェブサイトを立ち上げています。医師になるために単科大学を卒業し、ずっと医師をしてきて、ほかの職種と知り合う機会はありませんでした。しかし、ここでは多種の人たちと出会うことができました。自分の幅が広がった感じがします」 【コース在学院生】
▽亀田総合病院(千葉県鴨川市)リハビリテーション室・作業療法士
畠山明華さん
「MBAコースの2年目となりました。ここの修了(卒業)生でMBAを取得したMSW(医療ソーシャルワーカー)の知り合いに紹介してもらい、入学しました。病院に勤め始めて6年目。回復期病棟にいますが、いろいろ疑問が出てきています。患者さんを在宅に戻そうとしても、認知症であったり、独居であったりすると難しかったりします。ここで医療保険や介護保険の成り立ちなどを学ぶことができて、とてもためになっています。もっと勉強をして視野を広めていきたいと思っています」 ▽東京リハビリ訪問看護ステーション サテライト中野(東京都中野区)理学療法士
平田圭佑さん
「ここに来て初めて分かったのは、私が思っている以上に、医療現場で悩んでいる人が多いということです。その中で光明なのは、ここでのいろいろな人との交流を通じて、外側から何かしら手が入れば、医療現場が変わる可能性があると考えられるようになったことです。例えば、ITを積極的に取り入れれば、『井の中の蛙』のような業界観も変わるかもしれないと思っています」 ▽横浜市立大附属市民総合医療センター(横浜市)診療情報管理士
中神幸子さん
「職場は病院ですが、私は横浜市の職員です。市の『次世代の医療政策を担う人材育成』というプログラムに応募して、ここに来ました。多摩大学大学院以外にも、社会人を受け入れている学校がありますが、あえて医療にかかわらない人も参加することをポリシーにしていることに、私は魅力を感じています。MBAコースでは、医療ではないほかの業態で、違うバックグラウンドの人と出会うことができて感謝しています。ものすごく大きなコラボレーションができるような気がしています」
2月1日(水)、品川サテライトキャンパス「体験講座」の受講者募集
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