夜勤支える看護師常駐のコールセンター
富士通が新発想の見守りソリューション発売
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そもそも、夜勤は日勤よりも少ない人数で利用者に対応しなければならない。施設によっては1人で50人、あるいは100人の利用者に対応しなければならないことも決して珍しくはない。その上、夜や早朝は、利用者が体調を崩しやすく、認知症の人の徘徊などが激しくなりやすい時間帯でもある。 医労連の担当者は、特に急激な症状の悪化や徘徊の激化が、医師や看護師が常駐しない施設や高齢者向け住宅の介護職員にとって、極めて大きな負担となっていると指摘。そして、過酷な労働環境が介護職員のやる気をそぎ、離職の引き金の一つになっていると話している。 ■利用者からのコール、緊急性を看護師が判断し連絡 そんな過酷な夜勤を支える大きな力となり得るのが、富士通が提供する「居住者の見守りソリューション」だ。 このシステムの最大の特長は、利用者の居室に専用の端末を設置するだけで、24時間365日、コールセンターに常駐している看護師による相談や見守りを受けられる点だ。 健康に不安を感じた場合などの看護師への相談については、利用者が端末の「相談」ボタンを押せば、その場で受けることができる。しかも、利用者から連絡があった際、看護師資格を持ったオペレーターが緊急の支援が必要と判断すれば、家族や利用者が入居している施設の夜勤担当者に対し、利用者の様子を確認するよう連絡を入れる仕組みが整えられている。 「居住者の見守りソリューション」の開発を手掛けた富士通の担当者は、このシステムについて、次のように説明する=イメージ図参照=。
「端末には、『相談』と『緊急』の両方のボタンが付いていますが、高齢の方はボタンを区別せず押すこともありますので、『緊急』のコールが入ったからといって、すぐに家族や連携企業に連絡することはありません。看護師資格を持ったオペレーターが、高齢者との会話から緊急対応の必要性を判断します」 つまり、オペレーターが判断してくれるおかげで、家族や介護職員は緊急性のない通報に悩まされることはないということだ。利用者からのさまざまな通報に対応するため、仮眠を取る間もない職員にとって、「居住者の見守りソリューション」は業務負担の軽減に直結する仕組みであることは間違いない。 ■音で異常を感知し、早期対応につなげる さらに、このシステムの強みは、端末からの連絡がなくても、コールセンターの看護師が利用者を“見守り”、時には声を掛けてくれる点だ。もっとも、見守るといっても部屋の中にカメラを設置し、利用者の様子を24時間365日にわたって見続けるというわけではない。端末がキャッチした室内の生活音や人の動きによって、看護師が利用者の状況を判断するのだ。会話の内容そのものを記録するのではなく、生活音から会話している様子を「発話」イベントとして検出し、必要な分析結果のみを利用するため、利用者のプライバシーに配慮した見守りを実現した。 富士通の担当者は、その方法について、次のように説明する。 「例えば異常な大きな音が発生した場合、利用者が何らかの理由で倒れたことが考えられます。逆に長い時間、音も発生しなければ動いた様子も確認できない場合も、深刻な症状に陥っている可能性があります。そして、利用者の状態が深刻であればあるほど、通報するためのボタンを押すこともできず、介護スタッフの対応が遅れる場合が多い。しかし、居住者の見守りソリューションは、利用者のアクションがなくても異常を音などで検知し、コールセンターから利用者に確認が入るので、巡回時の目視など以外でも気付く手段となり、対応の遅れを抑制することができます」 ■夜勤時間帯の介護の質向上も期待 既に述べた通り、夜勤の介護職員は1人で100人にも達する数の利用者をケアしなければならず、体位交換やオムツ交換などの日常業務だけでほとんど手いっぱいだ。それだけに富士通の担当者は、「居住者の見守りソリューション」を導入することは、夜勤時間帯の介護の質の向上につながると力を込める。 「人手が少ない夜勤の時間帯では、精神的にも肉体的にも一人ひとりの負担が重い。しかし、居住者の見守りソリューションは、夜間のスタッフが少ない時間帯でも、睡眠状態を遠隔で把握できるので、より介助が必要な高齢者への対応を優先できます。結果として、必要な人により早くサービスを提供できるため、介護の質の向上にもつながります」 プライバシーに配慮しながら利用者を見守り、いざというときには素早く通報・連絡してくれる「居住者の見守りソリューション」。長い夜勤の間、過酷で孤独な業務と向き合う介護職員の強い味方になってくれるはずだ。
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