ネーベンの記憶に残る、いいオーベンに
近藤・都医副会長、11日にセミナー開催
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近藤副会長は、医師会の役割について、開業医などの利益団体や圧力団体ではないと断言した上で、日本医師会は、医療の質向上のために、国の医療政策などに働き掛ける役割がある一方、都医などの地区医師会は、「若手医師や医学生の育成にこそ、その存在意義がある」と強調する。 現行の医師臨床研修制度が2004年度にスタートしたことを受けて、翌年度から都医は、「指導医のための教育ワークショップ」を主催している。近藤副会長は常々、同ワークショップに臨む指導医に対して、「研修医(ネーベン)の記憶に残る、いい指導医(オーベン)になっていただきたい。地域医療研修を通じて、いい医師を育成することは、結果として何年か後の社会に貢献することになる」と話してきた。 ■近藤副会長のオーベンの一人は米国で活躍するロイ・芦刈氏 近藤副会長と芦刈氏の最初の出会いは、近藤副会長が慶大医学部5年生の時だった。家族旅行で出掛けたニューヨークで、大学の31年先輩で米国での医師免許(ECFMG=Educational Commission of Foreign Medical Graduate)を取得して活躍していた芦刈氏と会った。 芦刈氏は慶大を卒業し、インターン終了後にニューヨークのマウントサイナイ病院でトレーニングを受けるなどして乳がんのスペシャリストとなり、米国で広く知られるようになった。長年、ニューヨーク医科大で教鞭を執り、米国副大統領夫人の主治医を務めたこともある。
近藤副会長は1年後、医学部6年生の5週間の夏休みのすべてを使って、乳がん患者の治療に当たる芦刈氏のそばで、最先端の手技を目の当たりにしたり、外来での患者との接し方などを学んだりした。「今でも、芦刈先生の手術の時の手の動きは忘れません。先生からは、『近藤くん、世界を見ろ』と言われました」と懐かしそうに当時を振り返る。 近藤副会長は、1999年から渋谷区で、2003年からは都で、医師会の活動に従事している。そして、「医師会は、若い医師もベテランの医師も、大学病院にいようが、民間病院にいようが、臨床医であろうが、基礎研究をしていようが、すべての医師のための団体に変わりつつある」と話す。その上で、芦刈氏を含む恩師と仰ぐたくさんの医師たちが、自分を育ててくれたとの思いから、医師会は、この国の将来の医療を担う若い医師を育てる役割があると感じている。 ■実家のすし屋を継がず、医師の道を選ぶ 近藤副会長の実家は、病院でも診療所でもない。父は、愛知県から上京し、一代ですし屋「日吉すし」(渋谷区)を開店した。「日吉すし」という店名は、父の出身地にちなんでおり、豊臣秀吉の幼名とされる「日吉丸」から命名された。1963年11月に開店し、近藤副会長は、ちょうどその1年後に生まれた。 近藤副会長は、建築士だった母方の祖父に触発され、子どものころから遊びで、図面を引くのを手伝い、現場に付いて行ったことなどもあって、建築の道に進もうと考えていた時期もあった。しかし、その祖父が脳卒中で倒れたり、父が病気がちだったりしたこともあって、慶應高校3年生の11月に医学部志望に変更した。 同大医学部時代には芦刈氏以外にも、影響を受けたたくさんのいわゆる「オーベン」がいた。当時、医学部には先達の講義があった。その講義は人気で、出席率が一番高かったのではないかという。その中でも、日野原重明・聖路加国際病院名誉院長の講義は印象に残っている。 日野原氏からは、「臨床医学の父」といわれるカナダ生まれの内科医ウイリアム・オスラー(1849-1919)の講演集「平静の心」を通じて、医師は歴史や音楽などの教養を高めることによって、患者と接するときの言葉に厚みが出てくると教わった。そのこともあり、近藤副会長は「ナラティブは患者さんに語ってもらってこそで、患者さんに語らせる技術も、コミュニケーションの一つだと知った」と語る。 同大卒業後に同大病院内科に入局して以来8年間、同病院のほか、当時の大田原赤十字病院(現在の那須赤十字病院、栃木県大田原市)などの関連病院に勤務した。同病院では、内科全般に加え、当直では小児科も担当し、透析外来なども経験した。
11日のセミナー第2部の「明日から役立つ臨床推論」の講師を担当する徳田安春・独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)総合診療顧問とは、厚生労働省を通じて派遣された沖縄県立八重山病院(石垣市)で一緒だった。徳田氏とは共に、地域医療連携の重要性を学び、「かかりつけ医」機能の発揮とは何かを肌で感じた。
その後、父のすし屋の閉店がきっかけとなり、近藤副会長は慶大病院を退職し、1997年11月に店を改装して近藤医院を開業した。
■「かかりつけ医」とは患者との信頼関係
近藤副会長は、今回のセミナーのテーマである「いい医師になろう! ~総合診療力を高め、真の『かかりつけ医』になるために~」に盛り込まれた「かかりつけ医」について、このように話す。
「『あなた(患者)のことは、私が責任を持って診ます』、そして大事なのは、『それ ならあなた(医師)に任せます』という関係ができているかだと思います。そのような関係が構築できていれば、患者から『かかりつけ医』だと言われ、医師も『私は、あなた(患者)のかかりつけ医です』と言えるのではないでしょうか」
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