調剤薬局・再編時代 下
薬価改定と消費税率がM&Aの裾野を広げた
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調剤薬局・再編時代 上―飽和した市場が黒字薬局のM&Aを生んだ ■4月以降に変化し始めたM&Aの規模 ―今後もM&Aの規模は拡大していくでしょうか。
上場企業がかかわるM&Aの規模は間違いなく大きくなるでしょう。ただし、今年4月以降の動きとして、少し傾向が異なるM&Aも目立ち始めています。前回で挙げた区分でいえば「地域NO.1薬局」が譲り受けるM&Aが増え始めているのです。 具体的には、上場企業が譲り受けようとしない「パパママストア」を、地元の「地域NO.1薬局」が譲り受けるようになってきたのです。 ―これは報酬削減となった今年4月の薬価改定の影響とみるべきですね。
その通りです。ほとんどすべての経営者が、ある程度の規模が必要だということは分かっています。そして、このままではうまくいかないという危機感もありました。そこにマイナス改定が突き付けられ、より「規模の経済」の重要性を意識するようになった結果の動きといえるでしょう。 さらに消費税率の引き上げが見送られたのも大きく影響しました。消費税率の引き上げ分は全額が社会保障に充てられます。ですので、消費税率の引き上げの見送りは、そのまま社会保障財源の逼迫を意味します。当然ながら2018年度に予定される報酬改定も厳しいものにならざるを得ません。こうした経営環境の悪化を受け、多くの薬局の経営者らが将来に向け、新たな道を模索し始めているのです。
■M&A、特に早めに乗り出すべき薬局は? ―この状況にあって、特に早めにM&Aに乗り出すべき薬局は、どのような薬局ですか。
地域に欠かせない社会資源である薬局は、他の企業にも増して継続することが大切です。その観点に立てば、「後継者がきちんと育っていて、薬剤師の数も十分に確保できている」と断言できないすべての薬局が、M&Aという選択肢を意識すべきです。さらにいえば、少しでも経営上のリスクが想定されるのであれば、早めにM&Aを検討すべきです。 ―なぜ、早く検討すべきなのですか。
私たちは多くの薬局経営者の相談を受けてきましたが、特に気になるのは「管理薬剤師が突然辞めた」や「複数の薬剤師が辞めた」など、薬局運営上壊滅的といえる状況に陥ってから相談に来る方が多いということです。この場合、譲渡ができたとしても条件は悪くなります。そもそも成約に至らない場合すらあります。そうなれば店舗を閉鎖せざるを得ません。
こうした状況を避けるためには、少しでも早い検討と決断が不可欠なのです。 ■薬局の買収を目指すドラッグと商社 ―ところで薬局が薬局以外の業種と連携したり、M&Aをしたりする案件は増えていますか。例えば介護事業所や病院、サ高住であれば業種としての親和性は高いと思います。
その傾向は、むしろ弱まっています。介護や医療の施設はハード整備が必要です。大きな“ハコモノ”を必要としない薬局とは、むしろ親和性は低いといえるかもしれません。 ―国は「かかりつけ薬局」の普及を目指しています。そのためには、地域の高齢者とのネットワークを築いている通所介護事業所などと連携するのが早道と思うのですが。
「かかりつけ薬局」という切り口で考えれば、確かに通所介護と調剤薬局は親和性があります。しかし、今すぐにこの2つの業界でダイナミックなM&Aが進むということはないでしょう。介護は介護でM&Aが進み、調剤は調剤でさらにM&Aが進んだ後、より大きな資本同士の間で、そうした連携が実現するようになるのではないでしょうか。 ―調剤薬局を買収しようとする大資本はありますか。
当然あります。まずはドラッグストアでしょうね。商社もあり得ます。
いずれにせよ25年に向け、制度はさらに激しく変化します。その波を受け、調剤薬局のM&Aもより加速するでしょう。さらに激しさを増すM&Aとどう向き合い、対処するのか―。ほとんどすべての薬局経営者が、この課題と真剣に向き合わなければならない時が来ています。
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