看取りに特化した「医療型サ高住」の可能性
ライフデザインゼロ・吉田代表に聞く
1カ月当たりのベッド単価が100万円以上、利益率が40%超え-。そんな高収益を実現できる高齢者住宅事業のモデルがある。看取りに特化し、手厚い医療ケアを提供するサービス付き高齢者向け住宅(医療型サ高住)だ。今、病院や介護施設の経営環境が厳しさを増す中で、在宅での看取りを促進したい国の後押しもあることから、こうした事業に注目が集まる。
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「病院は看取りの場ではない。それが厚生労働省が出した指針です。それはつまり、病院以外に看取りの場をつくっていく必要があるということです」
早くから潜在的なニーズをつかみ、医療型サ高住のモデルをつくり上げた株式会社ライフデザインゼロ代表取締役の吉田豊美氏は、そう話す。
吉田氏は、急性期病院や医療法人の訪問看護ステーションでの勤務を経て、2005年に独立。名古屋市に、当時としては珍しい24時間365日対応する訪問看護ステーションを開設したことで知られる。「行き場のない終末期のがん患者を支えたい」。そんな思いに駆られての決断だったという。
質の高いケアはすぐに評判を呼び、開業から1年でステーションを増設。2カ所の拠点で、3年間に120人を超える利用者の看取りを支援した。しかし、在宅での看取りに手応えを感じた一方で、「訪問看護の限られた時間では患者や家族を支え切れないとの思いや、職員の疲弊を何とかしなければならないという焦燥感を持ちました」と吉田氏は当時を振り返る。
そこで、吉田氏は次の一手に出る。今で言うところのサ高住に当たる「高齢者専用賃貸住宅」事業への参入だ。08年に、「ナーシングJAPAN」を設立。医療ニーズが高く、在宅生活を送るためには何らかの支援が必要な終末期のがん患者や難病患者に特化した住宅事業をスタートさせた。その後、同事業を通じ、「医療型サ高住」というモデルに可能性を感じた吉田氏は、その考えやシステムを普及するため、14年にコンサルタントへ転身。現在に至る。
■病院の延長で考えると失敗する
吉田氏は、医療型サ高住を経営するポイントについて、次のように話す。
「高収益だからこそ、使う社会資源が多岐にわたり、中でも医療保険と介護保険のすみ分けには注意を払う必要があります。終末期のがんの方は平均76日ほどで亡くなられますので、ベッド管理も大変です。経営的には難しい側面もあり、さまざまな工夫が必要です」
また、医療法人が運営するサ高住の場合は、人員配置やケアの方針を病院の延長線上で考えがちな点にも注意が必要だと指摘する。
その上で、単なる「病院の後方支援ベッド」のような場所になるのか、「終の棲家」としての機能を果たせる場所になるのか、それは経営者が「在宅での看取りを支援するための施設として造る」との強い覚悟ができるかどうかに懸かっており、それ次第では事業の収益性も変わってくると吉田氏は強調した。
■「医療型サ高住」のモデルが素晴らしい理由
吉田氏は、コンサルタントに転身して以降、各地で講演を行ったり、現場に入り込んでコンサルティング活動をしたりしている。その中で必ず気を付けていることがあるという。それは、吉田氏自身の「体験」を織り交ぜて話すこと。
「高収益だね。こういうやり方をしたらもうかる、もうからない。そんな考え方だけでは感動してもらえませんし、共感を呼ぶことはなかったと思います」と吉田氏。自身の経験を話すことで、人の生死にかかわってきた医療者や介護者には必ず看取りをめぐる類似体験があり、「必ず腑に落ちるものがある」と言う。
そして、収益性に注目されがちなビジネスモデルだが、その裏には、患者や家族が死を受け入れていく過程で生まれるさまざまな物語や、そこに自分たちがかかわることで得る数多くの気付きがあるとし、「なぜ、こうした場所が必要なのか」という原点を忘れないことが何よりも大切だとした。
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