ISO管理を効率化、費用は他社の5分の1
シヤチハタ「パソコン決裁DocGear」
診療報酬の施設基準は、人員配置などのストラクチャー評価から、第三者機関の認定を受けるプロセス評価や、在宅復帰率といったアウトカム評価に移行しつつある。2016年度の診療報酬改定で、国際標準化機構が定めた臨床検査に関する国際規格(ISO15189)に基づく技術能力の認定を受けた医療機関での検体検査を評価する「国際標準検査管理加算」が新設されるのも、その一環。しかし、医療機関が第三者機関の認定を受けるには、多くの関連文書の作成や管理が必要で、担当者にかかる業務負担が問題となっていた。こうした課題を解決してくれるのが、シヤチハタの「パソコン決裁 DocGearクラウド」(以下、DocGear)だ。昨年3月からこのシステムを導入している岡山大病院の岡田健・医療技術部長は、「使い勝手が非常によく、特にマンパワーの省力化に役立っています」と話す。
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07年からISO15189の認定を受けている同院では当初、文書を紙で管理しており、文書の申請から承認などの各フローの履歴管理に多大な労力を費やしていた。また、定期的な審査のたびに多くの時間と手間がかかっていた。
「以前は、申請者が作成した1枚の文書をすべての検査室に回覧し、承認し終えるまでに1カ月近くかかっていました。そして、承認作業がどこまで進んでいるのか、状況把握も困難でした」。臨床検査技師長でもある岡田氏は、DocGearを導入する前の状況を、こう振り返る。
ISO文書の申請・承認フローの履歴管理や、定期的な審査にかかる時間や手間を減らす方法はないか―。岡田氏がこのように模索する中で出会ったのが、DocGearだ。
このシステムは、文書の申請や承認などの作業を電子上で行うもので、パソコンだけでなく、スマートフォンでも承認作業が可能。また、誰がいつ、どの操作をしたのかといった履歴を一覧で確認することもでき、承認作業が滞っていれば、決裁を促す機能もある。さらに、このシステムを導入した場合でも、以前から使用している書類をひな型のまま使うことができるのも特長だ。
■導入の決め手はコストの安さ
文書の申請から承認までのワークフローを電子上で行えるシステムは各社から販売されており、岡田氏は当初、他社のシステムの導入を検討していた。では、なぜ同院はDocGearを選んだのか。その最大の理由は、費用の安さだという。
「DocGearにかかるコストは、他の同様のシステムよりも格段に安い。これが採用した一番の決め手です」と岡田氏。DocGearのクラウド版の場合、初期費用が8万円、月額費用は1万2000円で、年間22万4000円(いずれも税別)から利用できる。この金額は、同じ機能を持つ他社のシステムにかかる年間費用の約100万円の5分の1程度だ。
岡田氏がシヤチハタの担当者から説明を受けた時に、導入しやすいと感じたことも採用を決めた理由の1つだ。「担当者が来てシステムを構築するのに1日かかるようなら導入は難しかったのですが、メンテナンスを少しするだけで使用できると分かったので、DocGearに決めました」。
■文書の回覧が1週間以内に短縮
同院では、血液学的検査や生化学的検査、免疫学的検査などを行う検査室で働く医療技術職員がDocGearを利用しており、規定書や品質マニュアル、標準作業手順書(SOP)などを、このシステムで一元的に管理している。
また、検査室共通や検査室ごと、廃止文書用といったフォルダーをそれぞれ作り、版の管理を各フォルダー内で実施。新たな文書を作成する場合は、作成者が申請者となり、審査者や承認者、回覧者、文書管理者を決め、承認ワークフローを設定している。
岡田氏は、「今では1枚の文書をすべての検査室へ回覧するのを1週間以内で終えることができます」と時間短縮の効果を強調する。同院では導入前よりも迅速に承認作業を行えるようになったため、承認作業のために発生していた職員の超過勤務が減り、人件費が抑えられるようになった。電子化の推進によって、印刷用の紙が以前より9割近く節約できていることも導入のメリットだという。
■学会報告のやりとりでも活用
DocGearには、ISO関連文書の管理以外にも使い道がある。同院では医療技術職員による学会や研修会の報告でもこのシステムを活用している。導入前は、医療技術職員が学会などの出張報告書を臨床検査技師長の岡田氏に提出していたが、現在は学会などに出席した医療技術職員がDocGearにアップロード。それを岡田氏が確認し、承認している。
「これまでは本人と私との報告書のやりとりで済ませていたので、他の人は研修の内容などが分かりませんでした。しかし、今は他のメンバーも報告書を閲覧することが可能となり、情報の共有が図れるようになりました」と語る岡田氏。今後は会議の議事録をはじめ、インシデントが発生した際に作成する「是正・予防処置報告書」といったISO関連書類の保管にも活用の余地があるとも指摘する。
同院では約60人の医療技術職員がDocGearを利用し、関連業務の効率化を図っている。岡田氏は人員が多い医療機関ほど、このシステムのメリットを享受できると考えている。
「人員の規模が大きくなるほど、重要な文書の承認や確認にかかわる人の数が増える傾向にあるので、作業効率の向上や時間短縮が大幅に図れるDocGearが大変役に立ちます」
医療介護経営CBnewsマネジメント
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