【記者が同行】薬剤師沖縄見学ツアー
参加者の多くが転職意欲アップ
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沖縄県は、人口10万人に対する薬剤師数が2012年末時点で全国最下位となっています。これは、県内に薬学部がないことなどに起因していると考えられています。キャリアブレインでは、この沖縄の薬剤師不足の解消に貢献しようと、今回のツアーを企画しました。
ツアーに参加した薬剤師らは、薬学部の学生2人を含む20代前半から50代後半までの20人で、平均年齢は約40歳。女性が7割を占めたほか、夫婦や子ども連れで参加した薬剤師もいました。東京都や千葉県、神奈川県、埼玉県など関東からの参加者が最も多く、九州や関西、東北地方などから来た人もいました。一方で、薬剤師の採用を目指す施設側の内訳は、病院7、薬局5でした。
■首里城など沖縄観光からスタート
ツアー初日は気温24度で快晴。3月にもかかわらず、半袖でも少し汗ばむような陽気でした。全国各地から薬剤師が那覇空港に集まり、午後から観光を楽しみました。
立ち寄ったのは、世界遺産の「首里城跡」や、昔の沖縄を再現した町並みの中でタイムスリップ気分を味わえる「おきなわワールド」など。友人同士で参加した女性薬剤師2人組は、おきなわワールドで沖縄の伝統的な衣装の着付け体験をしていました。また、移動のバスの車窓から見える家々の屋上に設置されたタンクに疑問を持つ薬剤師らに対し、現地ガイドが、「夏の水不足による断水に備えるために水が貯めてあります」と解説する場面もありました。
その後、一行は県内随一の繁華街「国際通り」に移動し、夕食会場である琉球料理店に向かいました。ここで、病院と薬局の人事担当者などが合流し、懇親会を行いました。担当者らは席を積極的に回り、薬剤師らと名刺交換をする様子がそこかしこで見られました。懇親会終了後、九州から来た薬学部5年生の2人は、「沖縄も就職先に考えていますが、こういうチャンスがないと直接話を聞けないので、いい機会になりました」と話していました。
■2日目は各施設の説明会、文化や家賃相場の紹介も
ツアー2日目は、宿泊先のホテル近くの会場で、施設側が説明会を開きました。施設ごとに工夫を凝らしたプレゼンが展開され、例えばある薬局は、「沖縄の慣れない環境の中でも、服薬指導などの業務に集中できるように」と、最新の薬剤ピッキングシステムなどを導入している点をアピールし、またある病院は、「白衣の下に水着を着て仕事をして、終業後にそのまま近くの海に遊びに行く薬剤師も多い」と、沖縄らしさを前面に出していました。
また別の薬局は、沖縄には肥満や「隠れ糖尿病」が多く、健康や医療に対する意識が低い実情があるとして、「ぜひ薬剤師の皆さんに来てもらって、健康長寿の推進に貢献してほしいです」と呼び掛けていました。さらに、米軍関係者など外国人も病院や薬局を訪れることがあるものの、大半は日本語を理解できるため安心して大丈夫といった情報や、薬を積んだ船が台風によって数週間止まり、在庫がだんだんと少なくなっていく中で薬剤師の工夫が求められるという話もありました。
施設のプレゼンの合間には、現地に店舗を構える不動産仲介業者から、エリアや広さ別の家賃相場についても紹介がありました。また、家賃以外にも、▽駐車場が無料で付いてくる▽備え付けのエアコンは冷房機能のみ▽窓には台風対策の面格子が付いている-など、住む前に知っておくといい、沖縄の物件に関する知識についても説明があり、薬剤師らの注目を集めていました。
その後、各施設がブースに分かれ、薬剤師らの質問に個別に対応できる時間を設けました。薬剤師側からは、「これまで療養型の病院の経験しかないのですが、急性期病院でもやっていけるでしょうか」「初めから長期の勤務を考えるには勇気が要るので、“お試し”でまず1年だけ働かせてもらえないでしょうか」など、個々の事情やニーズに合わせた相談が寄せられていました。また、この日も、夜は施設側を交えて懇親会を行いました。
■「現地に来てみて初めて分かりました」
3日目の最終日は終日自由時間とし、薬剤師らは個々の希望に合わせ、それぞれの病院や薬局の施設を実際に見に行ったり、観光を楽しんだりしました。
東北地方に住む40代の男性薬剤師に、ツアーに参加した感想を聞いたところ、「実際に移住することになると、私だけでなく、家族にも沖縄に慣れてもらう必要がある点が重要だと、現地に来てみて初めて分かりました」と答えました。この男性は、地元である九州と行き来がしやすい場所への転職を数年前から模索していたものの、東日本大震災後は被災地域への支援などに忙しく、機を逸してしまっていたといいます。今回のツアーで、地名や人の名前、方言など独特の文化に触れたことで、より現実性を伴った想像ができるようになったようでした。
ツアー終了後、薬剤師ら20人にアンケートを取ったところ、参加する前に比べて転職意欲が「非常に高くなった」と答えたのは2人、「高くなった」は10人と、合わせて全体の6割にとって、今回のツアーは沖縄での勤務をさらに積極的に検討する機会となったようです。もともと強かった転職へのモチベーションを維持した人も多く、「これから具体化したい」と今後を見据えた感想も聞かれました。また、給与条件以外で沖縄で働くメリットや魅力を見つけることができたかどうかという質問に対しては、全体の85%に当たる17人が「見つけることができた」と回答。「さらに沖縄のことを知りたい」といった声も多くありました。
今回のツアーを企画したキャリアブレイン那覇出張所の柘原亮は、「参加した薬剤師の皆さんには、インターネットや電話などでは知ることができない“リアルな沖縄”を体験していただくことができました。病院や薬局にとっても、実際に薬剤師の人柄を知った上で採用活動ができる貴重な機会になったと思います」とし、今後のさらなるツアー開催も視野に入れていると話しています。
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