医師が働きやすい県・新潟の魅力とは
県地域医療支援センター長に聞く
新潟県の魅力は何かと聞かれたら、どんなものが思い浮かぶだろうか。魚沼産のコシヒカリや、淡麗辛口の日本酒、規模が大きく良質な雪質で知られるスキー場などが挙がるかもしれない。これに対し、「実は、医師が働く上で欠かせない“三大要素”がそろっているのです」と強調するのは、県内で20年以上の勤務医経験を持つ中山均・県地域医療支援センター長だ。北陸新幹線の開通で、今後さらに都心からのアクセスが高まる同県。その魅力と医師の働きやすさについて、中山氏に聞いた。
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医師自身が満足できること、配偶者が満足できること、子どもが満足できることの3つです。まず、医師自身が満足して働き続ける上では、やりたい医療ができることが必須の条件と言えます。
地域医療支援センターのドクターバンク事業では、転職をお考えの県外の医師に、新潟県内の医療機関の中からぴったりの勤務先を紹介しています。
この事業では、転職をお考えの医師の元に、担当者や私が赴き、具体的なご希望を伺います。そして、私や県内に勤めるほかの医師が持つ経験を生かし、ご希望に沿える勤務先を提案します。もし、ご関心がある医療機関があれば、県の費用負担で見学することもできます。
例えば、「地域医療に興味を持ち、これから経験していきたいが、今までやってきた専門分野の見識も深めたい」とご希望される医師には、地域医療に熱心な病院での常勤勤務と併せて、専門病院での非常勤勤務も紹介するといった組み合わせの提案もしています。やりたい医療を真剣に考えるほど、これもしたいし、あれもしたいと領域が広がりがちですが、できる限りすべてのご希望をかなえたいという気持ちで臨んでいます。まずは、どんな希望でも教えてもらいたいです。
また、県外から転職する医師の働きやすさを向上させるため、県としても支援しています。例えば、今年度からの新規事業として、医療機関が、県外から勤務される医師のために医師事務作業補助者を配置したり、当該医師の研究活動の支援に取り組んだりする場合、費用の一部を助成しています。
これらは、ドクターバンク事業で吸い上げた“生の声”を参考にした取り組みであるとともに、県外から来た医師をもてなしたいという医療機関の気持ちを応援する取り組みでもあります。これからも県外から勤務される医師の皆様を支援していきます。
-臨床研修の環境はどうですか。
研修医にとっても、新潟は魅力ある場所です。臨床研修を担う県の中核病院には、周辺の広い地域から、さまざまな症例を持つ患者が受診します。簡単なものから複雑なものまで、深さと幅の両方を満たした症例を経験でき、研修後の進路を選ぶ上で非常に参考になるでしょう。
症例が充実する背景には、県の人口と医師数があります。人口(2012年10月1日時点)は全国14番目に多い234.7万人、新潟市の人口(同)は81.1万人です。一方、医学部を持つ大学が県内に1校であることなどから、人口10万人当たりの医師数(同年末時点)は、全国42番目の195.1人という状況です。これは、見方を変えれば、研修医が偏りなく多様な症例を診るのにもってこいの環境だと言えます。
経験をしっかり積むためには、症例数やバリエーションだけでなく、指導する体制も重要です。県内の臨床研修病院は、ベテラン医師の目が届く人数で、若手医師の育成に取り組んでいるので、ぜひ新潟県で臨床研修を受けていただきたいと思っています。
来年6月には、魚沼基幹病院がオープンします。上越新幹線浦佐駅の程近くに位置し、東京駅から1時間半とアクセスも良好です。そこでは、院内に設置される新潟大医歯学総合病院魚沼地域医療教育センターと連携して、高度医療と総合医療の両方を学べる環境を整える予定です。
同センターの総合診療科教授に決定している石山貴章氏は、現在、米国の病院でホスピタリストとして活躍しています。ホスピタリストは、病棟に入院する内科患者のマネジメントを担う専門医です。魚沼基幹病院ならではの“日本版ホスピタリスト”の育成を目指しており、総合診療医を志す若手医師にも魅力的な病院になるはずです。
-先述の三大要素では、配偶者の「満足」も重要です。
やりたい医療ができても、住みやすい場所でなければ、配偶者の満足を得られません。医師自身にも住みやすさは大事な要素で、その点でも新潟は満足してもらえる場所です。
まず、雪深いイメージを持たれがちですが、新潟市内は雪がほとんど積もりません。真冬に学会や研究会で同市を訪れた医師が、雪がなくて驚くというのは、よく聞く話です。もちろん県内には雪深い地域もありますが、除雪設備が整っており、生活に支障を来すことはまずありません。
また、東京にある有名百貨店の多くは、新潟駅周辺にそろっています。趣味の分野も、東京にいるのとほぼ変わらない水準で楽しむことができるでしょう。
一方、東京にない魅力も数多くあると思います。新潟でできるレジャーはスキーやスノーボードだけではありません。海水浴場が全国一多く、特に透明度が高い佐渡島の近くは、スキューバダイビングの名所になっています。温泉の数も全国3番目で、日ごろの疲れを気軽に癒やすことができます。
食の魅力も充実しています。コメや海産物は有名ですが、洋梨のルレクチエやにいがた和牛(村上牛)、茶豆、アスパラガスなどもあり、まさに食材の宝庫です。新鮮な食材を使った食事は、安くておいしく、皆様から満足していただけると思います。
東京からのアクセスも良く、東京駅から上越新幹線で、新潟駅まで最短1時間40分で着きます。
来春には、北陸新幹線が長野-金沢間で開業し、アクセスがさらに良くなります。東京駅から上越妙高駅まで新幹線が利用できるようになります。上越地区にある医療機関に、首都圏から非常勤として月に数回勤務していただく場合などの利便性が高まると思います。
-最後に、子どもの「満足」についても教えてください。
教育環境も整っています。県内有数の進学校である県立新潟高等学校では、理数科に、医歯薬学部への進学を目指す生徒向けの医歯薬コースを設け、新潟大医歯学総合病院での実習や講義なども実施しています。こうした取り組みにより、同校の医学部進学者数は毎年増加しています。
また、県と臨床研修病院が共同で設立した良医育成新潟県コンソーシアムの事業として、医師が高校で、やりがいなどを話す機会を設けています。ベテランから研修医まで、さまざまな年齢層の人が母校などで講演し、生徒からの質問にも答えます。医師としての心構えを伝えるのはもちろん重要ですが、受験に関するアドバイスも人気で、医学部を目指す生徒の参考になっているようです。
このように新潟には、医師が働く上での魅力が詰まっています。実際に働き始めた医師からは、「新潟の医療機関は医師を非常に大切にしてくれる」といった声も聞いています。転職先や研修先を探しているのであれば、ぜひ一度相談してもらいたいです。
新潟県福祉保健部医師・看護職員確保対策課のページは、こちらをクリック。
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