食物アレルギーFPIESで特定たんぱく質増加
千葉大大学院、症状との関連解明
千葉大学大学院医学研究院の井上祐三朗特任准教授を中心とした研究グループは17日、卵黄による食物アレルギーである食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES)に関する研究成果を発表した。患者の血清を調べたところ、免疫系の異常なストレス応答により発生するたんぱく質が増加していることや、白血球の一種である好中球が強く活性化し、炎症反応を悪化させていることが分かった。【斯波祐介】
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FPIESは非IgE依存症の食物アレルギー。原因食物に対する特異的IgEが関与してじんましんなどの症状を起こす、IgE依存性食物アレルギーと異なる免疫の仕組みが関与している。対象物との接触数時間後に嘔吐や下痢、低血圧などの重篤な症状を引き起こし、国内で年間約2,800人の発症が推定されている。乳幼児の卵黄によるFPIESは生命の危険にさらされるほど重症化するケースもあるが、まだ発症メカニズムは十分に解明されていないという。
研究では以前にFPIESと診断された患者17人を対象に、5グラムの加熱卵黄を用いた経口食物負荷試験(OFC)を実施した。OFC2時間後の血清サンプルでは、免疫系の異常なストレス応答で発生するプロテアソーム関連たんぱくやネジレーション関連たんぱくが、陽性群にのみ認められた。症状発生時には陽性群の血清において、好中球脱顆粒や好中球細胞外トラップ形成に関連するたんぱく質が認められた。
これらの結果から、FPIES患者の症状発生前に見られるプロテアソームおよびネジレーション関連たんぱく質の一時的な増加は、さまざまな自然免疫細胞の活性化の誘因になっている可能性が考えられるとした。症状が発現する場合は好中球の活性化が長引き、さらに好中球細胞外トラップ形成を誘導する強い活性化が誘導され、症状が悪化することが示唆されたという。
研究チームでは今後、FPIESで症状発生前に一時的に増えるプロテアソームやネジレーション関連たんぱく質が、どのような役割を果たしているか明らかにする必要があるとした。これらのたんぱく質の変化は診断の指標として活用し、FPIESの診断や予防に役立てる方法を検討することで、新しい診断法や治療法の開発につながることも期待できるという。
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