神戸百年記念、西横浜国際総合を表彰 病院広報実務者会議
担当者同士で病院広報のヒント探る
合言葉は「TTP(徹底的にパクる)」、手探りで日々の業務に取り組む病院広報にヒントを―。病院広報実務者による病院広報実務者のための情報共有・交流の場として、第20回病院広報実務者会議(特定非営利活動法人メディカルコンソーシアムネットワークグループ主催)が10月26日、横浜市内で開催された。【石川紗友里】
全国から14病院の広報担当者が自院の取り組みを発表(表)し、100人を超える参加者は熱心に耳を傾けていた。
今回、会場の参加者が気に入った発表事例に投票する試みが行われた。投票は午前と午後それぞれの発表事例に対して行われ、午前の部は、医療法人社団顕鐘会 神戸百年記念病院(兵庫県神戸市) 経営戦略・広報部の池内くるみさん、午後の部は、医療法人横浜博萌会 西横浜国際総合病院(神奈川県横浜市)広報・マーケティング室 有賀小都さんの事例に最も多くの票が集まった。池内さん、有賀さんは「HPR Persons」として表彰された。
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■地域・職員参加型で誕生、「ヒャクペン」を通じて愛される病院へ
神戸百年記念病院の池内さんは「病院マスコットキャラクターをつくろう!~笑顔と癒しを届ける新たな可能性~」をテーマに発表した。同病院は、2006年に病院100周年を記念して「鐘紡記念病院」から名称を変更した。地域イベントなどにより新しい名前も知られてきたものの、より身近に感じてもらうための広報施策としてキャラクターづくりに挑戦した。
池内さんは「キャラクターが生まれる過程」に着目。地域にも職員にも愛される、身近なキャラクターを生み出すため、一般公募でアイデアを募った。11歳~61歳まで幅広い年齢から13件のアイデアが集まり、病院の恒例イベント「いきいきフェスタ」やオンラインでの決戦投票を実施。地域の方や職員など約500人の投票で、同病院のマスコットキャラクター「ヒャクペン」が誕生した。
キャラクター誕生後は、クリアファイルやウェットティッシュなどのグッズ展開だけでなく、病院から最寄り駅までの送迎バスのラッピングも実施し、地域の話題となった。
職員向けには使用マニュアルを展開したところ、学会発表のスライドや看護師合同説明会でのグッズ配布など、部署の垣根を越えた広がりは想像以上だという。
池内さんは、「地域・職員参加型のキャラクターづくりが、病院を知ってもらう入り口になった。これからも『ヒャクペン』と二人三脚で地域になくてはならない病院を目指したい」と発表を締めくくった。
HPR Personsの受賞を受け「1月に『ヒャクペン』が誕生してから、この1年弱で色々な広報活動を通じて、思いもよらない広がりやつながりができた。このような評価をもらえてとても嬉しい」と笑顔を見せた。
■職員・経営層のリアルな声を、手渡しで直接届ける院内報
西横浜国際総合病院の有賀さんは「にしよこ院内報Project ~『誰かに聴かせるための本音』から院内コミュニケーションの活性化を図る~」をテーマに発表した。
同病院の職員数は485人。院内の情報伝達にはイントラネットを使用している。有賀さんは、便利ではあるが、経営層の方針や根底にある思いを伝える手段としては課題があると捉えていた。経営層に対する職員の不安感や横のつながりの希薄さを改善するため、院内報プロジェクトを始動。24年7月に第1号を発刊した。
院内報の名前は「今日も、誰かto」。院内報を読むことで、誰か病院の職員と会話をしているような、つながりを感じてほしいという思いが込められている。
コンテンツは「院長対談」「院長一問一答」「職員紹介コーナー」の3本立て。「院長一門一答」では、院内に設置した「三瓶先生直行BOX」に集まった職員からの質問に、院長がNGなしで答える。職員は匿名で質問することができ、現場のリアルな声を届ける仕組みだ。経営層も職員の声を知る機会になり、従来は一方通行だった情報伝達が、双方向のコミュニケーションに変化しているという。
有賀さんのこだわりはコンテンツだけでなく「配布方法」にある。職員に着実に届けるため、「手渡し」で職員全員の顔を見ながら直接配っている。院内報を渡すこと自体が職員同士の会話のきっかけになり、当初課題であった横のつながりの改善を実感していると、「手渡し」ならではの効果を語った。
HPR Personsの受賞を受けて「デジタルの方が発行側のコストはかからないが、受け手にとっては見に行く手間が発生する。全ての職員がいつでも見られる環境かどうかと言われるとそうではないので、手渡しという方法はマッチしていると思う。今後も発行を継続していくが、職員参加型など、さらに一歩踏み込んだ院内報を作っていきたい」と今後の意気込みを示した。
■事例を糧に、それぞれの病院広報のスタイルを
特定非営利活動法人メディカルコンソーシアムネットワークグループ理事長 山田隆司 氏によると、今回はかなり多くの演題の応募が集まり、時間の都合上泣く泣く発表数を調整したという。「これだけの事例を聞ける機会はなかなかなく、発表してくれた皆さんに感謝している。ぜひ今回得たヒントを糧にこれからも頑張ってほしい。病院広報はこれという正解がなく、何が良い・悪いというものでもない。色々な事例からパクれる部分は徹底的にパクり、それぞれの病院に合うやり方を追求してほしい」と病院広報担当者へエールを送った。
病院広報実務者会議は、事例の発表と病院広報の仲間が直接集まってコミュニケーションを取れる場として、来年以降も毎年開催予定。
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