被災しながらも情報発信、地域住民の“安心”のために
【病院広報アワード】動画で支えた復旧への歩み
【広報担当部門】特別賞
社会医療法人財団董仙会本部恵寿総合病院(石川県七尾市)
企画部企画課 金子佳樹さん
【関連記事】
病院広報の優れた取り組みを表彰する「病院広報アワード2024」で広報担当部門の特別賞を受賞した恵寿総合病院。今年1月に発生した能登半島地震で、被災しながらも自院の復旧活動の取り組みなどの動画を毎日発信。それを見た地域住民は、勇気づけられたり、安心感を覚えたりした。病院広報を通じて、そんな地域に寄り添う姿が評価された。近年多発する自然災害。そこで病院広報ができることは-。同病院の取り組みは示唆に富んでいる。
1月1日、同病院のある石川県七尾市は震度6強の大きな揺れに見舞われた。建物の倒壊こそ免れたものの、路面はひび割れ、医療機器や院内設備が各所で破損。天井などからの水漏れによって床は水浸しだったという。そうした状況の中、
動画はクラウドファンディング(CF)をきっかけに始まった。CFでは支援者へリターンを設定することが一般的だが、今回は震災という非常事態下での緊急支援という性質上、リターンとして復興への活動報告を毎日投稿することとした。
※連載終わり
発信する内容は、外来の再開や復旧した病棟へ入院患者が戻る様子、避難所と病院を結ぶ無料巡回バスの運行開始など院内外の状況や活動などさまざま。「全職員が一丸となって医療対応や病棟の復旧に奔走していた中、やるしかないという気持ちで一杯でした。刻一刻と変化する院内の状況を撮影し、可能な限り新しい情報を地域のみなさんに届けようと必死でしたね」(金子さん)と振り返る。厳寒期の中、雨の日だろうと雪の日だろうと、動画を撮影するため日々院内外を駆け巡った。金子さんを突き動かしていたのは、「災害でも医療を止めない」という地域医療を担う医療機関としての使命感だけだった。
CFでは被災状況を伝える動画が県内外の支援者の心に届き、1億円を超える支援金が集まった。支援金は、入院患者が使用する大浴場の湯を沸かすボイラーや検査機器など損壊した施設設備への修繕だけでなく、9月に被災した地域を元気にしたいという目的で行う「けいじゅフェスティバル」の費用にも充てる。
震災から7カ月が経過するが、復旧のめどすら立っていない被災地域も少なくない。そんな中、同病院は復興に向け歩み出している。その一歩にCFは大きく貢献する。被災した翌日にCFの実施を決めた神野正博理事長。法人全体の広報を統括する神野厚美常務理事が連日、金子さんと歩調を合わすなど、経営層と広報担当者の二人三脚で「病院広報アワード広報担当部門」特別賞をつかんだ。
医療介護経営CBnewsマネジメント
【関連記事】