DX導入で医療機関の仕事が増えれば「失敗」
問われる、経営層のアンテナ感度の高さ
医療経営のあらゆる課題解決のツールとして期待されるDX(デジタルトランスフォーメーション)。そして、それぞれの医療機関によって課題は異なり、現場に合った効果的な施策が打てるかどうかは、投資の是非を判断する経営層の医療DXに対するアンテナ感度の高さが問われているといっても過言ではありません。そのポイントとなる「アンテナの感度の高さ」とは-。今秋、開催されたCBセミナー「DX・AI時代 ~最新動向・事例から考える医療・医師の未来」(共催=ウォルターズ・クルワー・ヘルス、CBホールディングス)の中に、そのヒントがいくつもあり、その内容の一部を紹介します。
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■RPA導入で9000時間削減、仕事が楽に
(神野正博氏 社会医療法人財団董仙会 恵寿総合病院 理事長)
特に地方は医療従事者となる人がいません。その中で私たちがパフォーマンスを上げていくためにはどうすればいいのでしょうか-。仕組みを変えなければなりません。それを、デジタルを使って行っていく。そうしなければ、地方というか田舎における医療提供は維持できなくなるのではないでしょうか。
時間と空間の使い方を変えるためにはDXが必要です。DXを導入すると、業務にゆとりが生まれます。もし、そうならず、DXを入れることで仕事が増えるとしたら、それは「失敗」という理解をする必要があると考えます。私どもはRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)で、事務や看護、医師の業務時間などを合わせて、昨年1年間で9000時間くらい削減しました。今までやってきた仕事がガラッと変わり、楽になりました。
■DXで新しい働き方、チーム医療の文化醸成が大事
(坂本知浩氏 社会福祉法人恩賜財団 済生会熊本病院 副院長)
人が少なくなる中で、人材確保をいかにやっていくかが、これから必要になってきます。そして、その人材を定着させるためには、やはり、きちんとした安全な医療が行われているというところがベースになければなりません。DXが医療安全をサポートしていくと思います。
DX導入によって、さまざまな所で省力化が図られます。この省力化で生まれた時間を、職員自身のリフレッシュや自己研鑽に使うことで、いろいろな新しい働き方ができるようになってくるのではないでしょうか。
我々ドクターの働き方に関しては、これまでは主治医制の中で、自分の時間が少なかったことがあります。それをチームで働くということで、スムーズに働き方改革への対応ができるのではないかと思います。そのためには、チームで働くという点を受け入れる、土壌・文化をつくっていく必要があります。
■ROI分析で医療機関ごとの経営をサポート
(藤堂正憲 氏 ウォルターズ・クルワ―・ヘルス カントリーマネージャー)
病院は経営体ですから、DXが、どれだけ売り上げに貢献するのか、利益に貢献するかという点が非常に重要です。
ウォルターズ・クルワーが開発・販売などを手掛ける臨床意思決定⽀援リソース「UpToDate®」については、第三者の方々が、経営貢献につながっているという研究結果を出されており、こうしたデータを提供することができます。また、UpToDateの活用状況を踏まえ、ROI分析(リターン・オブ・インベストメント=投下資本の収益評価制)を活用しながら、各施設に、経営に必要な情報を提供しています。例えば在院日数の短縮や検索時間の短縮、医療過誤の減少などを計算し、活用されている医療機関に提供する取り組みも始めています。
■さまざまな可能性がDXに
(徳田安春氏 群星沖縄臨床研修センター長)
みなさまのお話を通じて、DXにはさまざまな可能性があるなということが分かりました。私は、研修医をティーチングすることが多いのですが、全国的な問題になっている研修医の時間外労働と自己研鑽の境界線や、その管理についてもDXを応用することで将来的に使えるのではないかと感じました。
また、UpToDateのようなエビデンスリソースを閲覧するためには外とインターネットで接続することになりますが、同時に電子カルテなどのセキュリティーとのバランスが大切になります。ほとんどの病院では同じ端末で使うことはできませんが、神野先生と坂本先生のお話を伺い、限定的であっても有用な情報にアクセスできるようになる時代になりそうで、素晴らしい未来に向かっていると思いました。
この内容は9月26日に開催したCBセミナーの中で行われたパネルディスカッション「変革の時代、医療・医師の未来を考える」の一部です。スピーカーには、神野正博氏(社会医療法人財団董仙会 恵寿総合病院 理事長)と坂本知浩氏(社会福祉法人恩賜財団 済生会熊本病院 副院長)、藤堂正憲氏(ウォルターズ・クルワー カントリーマネージャー)の3氏が登壇。モデレーターを徳田安春氏(群星沖縄臨床研修センター長)が務めました。セミナーでは、神野氏、坂本氏が、自院の取り組みを紹介する講演もありました。
▽オンデマンド配信の視聴はこちらから
https://www.wolters-kluwer.jp/archive9/
▽「UpToDate」の詳細はこちらから
https://www.wolterskluwer.com/ja-jp/solutions/uptodate
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