三菱電機、働き方改革支援に搬送ロボットで挑戦
薬剤、検体…病院内の搬送業務負荷軽減へ
医師をはじめ医療従事者の「働き方改革」が待ったなしの病院。三菱電機は多用途搬送ロボット「MELDY™(メルディ)」を活用しながら、薬剤や検体などの“院内搬送”を担うことで、病院における働き方改革支援に挑んでいる。2023年度から販売を開始するMELDYの魅力に迫った。
多用途搬送ロボット「MELDY」専用サイトはこちら
【関連記事】
薬剤、検体…。病院勤務している看護師や薬剤師をはじめ医療従事者の多くは、こうした搬送業務に、日々時間を取られている。三菱電機によると、搬送専用スタッフのいる、約400床ある病院に勤務する看護師が、“モノを運ぶ”のに費やす1日当たりの時間は2割あったという。「搬送業務はロボットに任せ、その分、資格業務に専念してほしいというのが、病院で働く人だけでなく、社会全体の願いでもあるのではないでしょうか。社会課題の解決を目指し、MELDYは誕生しました」。三菱電機三田製作所の事業戦略プロジェクトグループ モビリティサービス事業推進2G専任の住本勝之チームリーダーは、開発のきっかけと意義をこう強調する。
■カートが自由に脱着
MELDYの最大の特徴は、自律走行ロボットからカートが脱着することだ。薬剤、検体、輸血、酸素ボンベ、ロッカーなど必要に応じた運搬カートを結合させ、モノの搬送ができる。自律走行ロボットは他メーカーでも既に製品化されているが、「脱着型カート方式は国内で初めて」(住本氏)。
多用途搬送ロボット「MELDY」専用サイトはこちら
脱着型のメリットは大きく2つある。ロボットは充電式だが、荷物室が一体型だと例えば停電で充電できない場合、重量のあるロボットごと移動させないとカートに積んである荷物を必要な所へ届けることができない。脱着型にすることで、万が一、充電切れで走行ができなくなった場合でも、ロボットからカートを切り離し、職員がカートを搬送すれば、緊急時でも対応できる。
もう1つのメリットは、必要な荷物が到着したら、カートをロボットから切り離し、業務のタイミングに応じて、仕分けができる。カートが外されたロボットは自走で充電場所まで戻り、新たな搬送業務に向けて待機する。荷物室一体型のロボットでは、荷物が到着しても受け取る職員がいないと充電場所に戻れない。ロボット滞留という問題がナースステーションなどで発生する恐れがある。カートが脱着できれば、フレキシブルな運搬を限られたロボット台数でできるのだ。
ロボット導入後の現場で働く人との共働を徹底的にイメージしながら製品開発されたMELDY。その真骨頂はカートそのものへのこだわりだ。
既に多くの病院では医療従事者を介在させた運搬の動線がある。この動線の中には、例えば、注射薬を色別に管理することでミスを防ぐためのトレーなど、”箱”に入れたり、運んだりという、細かい作業も組み込まれている。こうした細かい配慮の積み重ねで、医療現場では安全を確保している。ロボット提案では、メーカー側の発想を医療機関に押し付ける動きが散見される中、三菱電機は徹底した医療現場の目線で製品開発に挑んでいる。「どの病院も、現場のルールや現場の経験をとても尊重されており、それぞれの現場で大切にしている点をしっかり把握、寄り添いながら、MELDYの開発に当たっています」(住本氏)。
多用途搬送ロボット「MELDY」専用サイトはこちら
■医療現場に寄り添うロボット提案
MELDYの開発に当たっているのは、カーナビゲーションや自動運転などの要となる機器を扱う部門だ。そんな部門で誕生したMELDYは、安全な自律走行を実現するため、多くの先端技術が採用されている。例えばカメラ。自動運転車に必要なカメラの数と同じ数のカメラを搭載。ただ、住本氏はこう指摘する。「自律走行型ロボットについては、技術的には最高水準にあります。10年前ぐらいであれば、技術進化が早いため不安を持つ導入検討先はありましたが、今はメーカーによって技術的な機能で大きく差が出ることはありません」。そこで三菱電機が重視しているのが医療現場に寄り添うという現場業務との親和性だ。総合電機メーカーが、カートを重視しているのはこうした背景がある。メーカー特有の「プロダクトアウト」という考え方は、ここにはない。利用者視点に立つ「マーケットイン」の発想で、ロボット開発を推進。脱着できるカートは現状、独自開発だが、「今後の量産化を視野に入れ、現在、あるメーカーさんと共同化に向けて検討を重ねています。医療従事者にとって、より使いやすいカートの提供を考えています」と住本氏は明かす。
多用途搬送ロボット「MELDY」専用サイトはこちら
開発に反映される病院現場の目線は、同製作所営業部モビリティソリューション営業課のメンバーが、病院それぞれの院内物流の状況を把握し、蓄積する。同営業課では、院内物流のうち薬剤を同時期に大量に運ぶ「定期便」などいくつかに分類し、状況に応じた院内物流のソリューションを提案している。同営業課の福井敦朗氏は「いろいろな病院へヒアリングしています。薬剤搬送で課題を抱えている所は多いですが、病院の規模や機能などによってお悩みはさまざまです。それぞれの病院で異なる課題を開発部門にフィードバックして、通常業務の動線に合うようカスタマイズをしていきます」と話す。
開発と営業が一体となり現場目線で、働き方改革待ったなしの病院の業務効率化を支援するMELDYにかかわるメンバーは約30人。同営業課課長の木本裕之氏は「高齢化が加速し、医療従事者への負担はさらに増えると予想されます。一方、物流業界での人手不足のように、搬送専業スタッフの確保も難しくなる恐れもあります。これからの医療を守るという社会貢献として、我々メンバーは一丸となって院内物流の改善支援に全力で取り組んでいます」と強調する。
多用途搬送ロボット「MELDY™(メルディ)」で病院の働き方改革支援に挑戦する三菱電機・三田製作所のメンバー(前列左から時計回り=住本勝之氏、坂之上浩氏、木本裕之氏、福井敦朗氏、後藤郁哉氏、内垣雄一郎氏)
■病院内をフレキシブルに移動、システム連携で人の介在不要も
病院の中で活躍するMELDY活用のイメージは以下のような流れとなる。
(1)病院薬剤師が薬剤をセットした多くのトレーをカートに収納し、病棟3階にある薬剤室に設置したタブレットでMELDYを呼ぶ。
(2)MELDYは3階にある充電ステーションを出て、薬剤室へ。MELDYは注意喚起のアナウンスをしながら自律走行する。
(3)薬剤室に到着したら、薬剤師はICカードで本人認証し、カートを装着。MELDYの顔部分に当たるタブレット画面で、目的地を指定する。
(4)MELDYは再び自律走行で、4階にあるナースステーションへ。エレベーター連携しているMELDYは3階からエレベーターに乗り込む。
(5)4階到着。自律走行でエレベーターを降り、目的のナースステーションへ向かう。
(6)ナースステーションに到着。看護師がICカードで本人認証した後、MELDYからカートを外し、薬剤を受け取る-。
これが薬剤室からナースステーションへ薬剤を運ぶための大まかな流れだ。
もっとも、運搬業務では、この先のイメージがある。医療現場から上がっている声としてあるのが、呼び出しや行き先選定などの自律化だ。「大きな技術としては最高水準に達していますが、拡張技術は、まだまだ広がりがあります。システム連携はその1つの例で、電子カルテなどと繋がれば、人の手を介さずMELDYを呼び出すことができます。現在、実用化に向けて検討を開始しています」と住本氏は語る。
多用途搬送ロボット「MELDY™」の問い合わせ先
三菱電機株式会社 自動車機器事業部
TEL 03-3218-2854 FAX 03-3218-2931
多用途搬送ロボット「MELDY」専用サイトはこちら
医療介護経営CBnewsマネジメント
【関連記事】