開所前に入居申込9割を超す住宅も
CBリサーチ流「高齢者住宅」とは
高齢者向け住宅の建設・開所・運営支援コンサルティングなどを手掛ける「CBリサーチ」。生き残りを懸けた薬局などの経営多角化を、高齢者住宅という新たな事業形態の提案でバックアップする。全国に拡大しつつある、CBリサーチ流「高齢者住宅」とは。
【関連記事】
8月初旬。茨城県内の調剤薬局が9月に開所予定の高齢者住宅の内覧会で驚く光景が広がった。わずか4日間の内覧会で、30ある部屋のうち仮予約を含めて28部屋が埋まった。「内覧会時点の予約数としては過去最高」。開発支援課で東日本エリアを担当する中村汐里課長は興奮気味に話す。
内覧会には、普段から処方薬などを受け取りに来る、なじみの客もいた。当初、9月の開所を予定していたが、あまりに予約が高水準だったことから、8月22日に前倒しした。「高齢者住宅としては地域で初めてのため、価格や建物の作り、入居後の自由度の高さなど、周辺の方に、住宅の良さを知ってもらおうと広報活動に力を入れた」(中村課長)と振り返る。
■入居費用10万円以下、年金収入内の価格設定
CBリサーチが提案する高齢者住宅の最大の特徴は、年金収入内で入居できることだ。家賃・入居管理費・共益費を合計で5万9,800円と食事費用を含めても10万円以下。そこに介護サービスが加わる。入居自由度が高い住宅として、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)もあるが、いずれも入居費が高い。CBリサーチでは、サ高住への関心はあるものの入居費用がネックと考える層が潜在需要として多いとみる。事業開発支援部の鎮目努次長は「年金収入内という価格設定により、周辺住宅に負けない高い競争力が確保できる」と強調する。モデルケースとして開所から8カ月目で入居の申し込み率を85%と設定するが、「初月で90%超に達する高齢者住宅もある」と鎮目次長は明かす。
住宅内には介護スタッフが常駐する。効率的に運営できるよう、要介護度1、2の入居者が中心だ。鎮目次長は「人の少ない介護を実現するため、着替えや洗濯、掃除など入居者の身の回りのお世話をメインにしており、シフトも組みやすい」と狙いを語る。効率化を考えても、入居者目線は忘れない。介護サービスは自由選択性を取っている。「もちろん、住宅内でサービスを利用してもらえるよう入居者には接するが、これまでで慣れているサービスの事業者があれば、そちらも使えるようにした方が、暮らしやすい環境をつくれる」(鎮目次長)。
効率的な運営などにより、経営する上で重要となる損益分岐も低い。鎮目次長によると、入居率は60%前後で黒字に。「サ高住だと75-80%の入居率が確保できないと黒字にならない所が多い」という。
■3年後には全国で50棟へ
こうした高齢者住宅が全国で拡大。現在、薬局オーナーを中心に18棟が開所している。2025年8月までに、クリニックなど医療系オーナーへの提案も強めながら50棟の計画を目指す。
CBリサーチは、中学校区を1つのエリアと捉え、市場調査や資金調達、オープン後の運営チェックを担いながら薬局などの経営の多角化を支援。もともと、高齢者住宅事業の提案は、薬局M&A仲介などを手掛けるCBコンサルティングの一事業部門で行っていたが、今後の事業展開を見据え、今年9月に分社化へ踏み切った。このため薬局との関わりが深いことから、堅調な受注が続き、25年度の目標に向け着々と事業は成長している。
事業が成長する一方で、現場ではある悩みを抱える。人材不足だ。事業拡大のエンジンとなるのがCBリサーチの2つの組織だ。1つは「開発支援課」。ここでは市場分析や資金調達のサポート、スタッフ採用や入居者集めなど開所までの業務を行う。中村課長は「数億円という大きな投資をサポートする以上プレッシャーも重たいが、その分、成功した時に、お客さまから頂ける『やってよかった』という言葉に喜びを感じている」と話す。
もう1つが「業務支援課」。事業を軌道に乗せるためには、しっかりとした事業運営のかじ取りが薬局などの経営者に求められる。そして高齢者住宅を運営するためには、介護報酬をはじめとしたさまざまな経営に関する知識が必須になる。開所後、経営分析や事業運営適正分析、マーケット変化分析など、計画目標に対しての定点チェックを行い安定経営の支援、さらには2、3棟目のドミナント展開につなげるのが業務支援課の役割だ。田中隆暁課長は「経営改善などを手伝わせてもらいながら、地域包括ケアという仕組みの中で、薬局経営者が主役になっていくのを間近で見させてもらっており、とてもやりがいを感じている」と話す。
こうした2つの組織が一体的に運営され、高齢者住宅をきっかけに、将来ビジョンを描ける薬局経営者が続々と登場している。茨城県坂東市で調剤薬局事業を展開しているメディカルキャビネット代表取締役の斎藤陽介氏もその1人。斎藤氏は「高齢者向け住宅を運営した経験がなく、不安はあったが、場面場面で皆さんからアドバイスをもらい、乗り越えることができた」と話す。
鎮目次長(写真)は、こう強調しながら一緒に働く新たな仲間を求める。「地域包括ケアの中で、住まいは中核になる。高齢者住宅は、まさに中心的な存在だ。1棟目で事業の確実さを認識され複数棟を建設、計画する動きだけでなく、給食事業など、高齢者住宅を機に、さらに事業の拡大を検討している調剤薬局もある。地域包括ケアという行政の計画を、CBリサーチの業務を通じて具体化させることができる、とてもやりがいのある仕事だ」。
医療介護経営CBnewsマネジメント
【関連記事】