調剤後フォローアップ強化、さらなる評価充実へ
厚労省、推進すべき対人業務のトップ項目
調剤後のフォローアップの強化が、今後推進すべき対人業務のトップに位置付けられました。適正使用の推進、服薬アドヒアランスの向上、受診勧奨や医療機関へのフィードバックの効果が期待され、厚生労働省は、効果の具体的な検証を進めています。医薬品医療機器等法によるフォローアップの義務化以後、調剤報酬による評価の充実も図られており、効果の検証を踏まえ、次回診療報酬改定では新たな評価項目の設定も考えられます。
※この記事は「薬局経営NAVI」とのタイアップ企画です
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1.薬局薬剤師の義務、調剤後のフォローアップ
調剤後のフォローアップは、2019年の医薬品医療機器等法と薬剤師法の改正により、薬局開設者と薬剤師は、「調剤した薬剤の使用の状況を継続的かつ的確に把握」し、さらに、患者またはその看護者に対して、「必要な情報を提供し、必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない」と規定されました。
調剤後のフォローアップの義務化であり、20年9月から実施されています。
その20年度診療報酬改定では、調剤報酬の「薬剤服用歴管理指導料」(当時)の加算として、がん患者を対象とした「特定薬剤管理指導加算2」(100点、月1回まで)と糖尿病患者を対象とした「調剤後薬剤管理指導加算」(30点、月1回まで)が新設されました。
いずれも、調剤後の服用状況や副作用の状況を患者に確認し、その結果を医師に情報提供した場合に算定できる点数です。
この調剤後のフォローアップの強化を「推進すべき対人業務」のトップに挙げたのは、「対人業務のさらなる充実」を中心課題とした厚労省の「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」のとりまとめ(22年7月)で、「より充実させていくべき」と提言しました。
フォローアップの効果として、▽適正使用の推進▽服薬アドヒアランスの向上▽問題が生じた場合の受診勧奨、医療機関へのフィードバックが行える-を挙げています。
そうした効果の検証については厚労省の研究班が行っており、▽副作用疑いの発見▽症状悪化の予防▽服薬アドヒアランスの向上-などの効果が見込まれるとしました。
具体的な効果の検証結果を踏まえ、次期診療報酬改定では、現行の「特定薬剤管理指導加算2」「調剤後薬剤管理指導加算」とは別に、調剤後のフォローアップに関する新たな評価点数が設定される可能性があります。
2.フォローアップの好事例と新規評価の方向性
厚労省研究班代表の益山光一・東京薬科大教授は、ワーキンググループに参考人として招かれ、中間的な報告として、フォローアップの好事例41例のうち5例を挙げ、実際の内容を紹介しました。
(1)70代男性で、根治切除不能または転移性の腎細胞癌。経口抗癌剤ヴォトリエント錠(1日1回800mgを食事の1時間以上前または食後2時間以降に投与)を服用中だったが、下痢症状が出たためフォローアップを実施。ヴォトリエント錠服用後30-40分で食事をしていたことが判明し、服用後1時間以上空けて食事することを再度説明。2週間後に電話をかけて、正しいタイミングで服用し、副作用も改善したことを確認し、トレーシングレポートで医師に情報提供した。
(2)40代女性で、うつ、片頭痛、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群。新規にフルボキサミンが処方されたが、患者は薬を飲むことに不安を感じていて、コンプライアンスに問題がありフォローアップ。来局の3日後に電話し、フルボキサミンは1日分のみ服用だったが副作用の消化器症状を自覚し、服薬の必要性やコロナワクチンへの影響の不安を確認。主治医と二人三脚でゆっくり治療すること、フルボキサミンの継続服用を指導し、再診時に主治医にも相談することとなった。ワクチンには問題がないことを伝え安心してもらった。
(3)70代女性で、高血圧症、骨粗鬆症。血圧が下がらない状況だった。薬の飲み忘れが多く、血圧が高いと思った時だけ飲んでいたことが判明し、服用の必要性を再度指導して、1週間後に患者宅を訪問しフォローアップ。適正に服用していることを確認。服薬の必要性が理解され、アドヒアランスが改善し、血圧も安定するようになった。
(4)70代男性で、肝細胞癌(坐骨転移、微小肺転移の疑い)。退院後、抗がん剤は入院した病院で、抗がん剤支持療法と疼痛管理は在宅医と薬局で対応。支持療法と疼痛管理に関して、服用状況や疼痛コントロール、薬剤効果、抗がん剤の副作用などを早めに確認・報告の必要ありと判断しフォローアップ。退院1週間後に患者宅を訪問すると、自宅療養中に発熱、口内炎、胃部不快感、便秘などの発生を確認。在宅医と協議し、疼痛管理の方針として、痛みが完全に消失すると体動が増えて過去の骨折部で骨折再発の可能性があるため、疼痛管理はある程度でとどめることを情報共有。便秘、発熱、口内炎、胃酸過多への対応も行い、フォローアップを継続。
(5)80代女性で、甲状腺機能亢進症、不整脈、胃炎、高脂血症、腰痛、ドライアイ。7種類の処方薬以外に、サプリメント8種類を利用中だった。服薬する錠数の話に齟齬があり、サプリメントを確認すると同じ働きのものを多数服用し、ビタミンなどは過剰に摂取していた。来局時にサプリメントの飲み合わせの問題を説明し、トレーシングレポートで処方医に報告。サプリメントは1種類のみ利用することとなり、今後もサプリメントが増えていないかを医療機関と連携しながら確認していくこととなった。
この5例だけでも、点数評価されている癌や糖尿病だけでなく、さまざまな疾患で、フォローアップが必要なケースがあることが分かります。
全41例の内容分類では、▽患者の年代は70代11例、80代14例と高齢者が多い▽フォローアップ期間は、2カ月が9例で最も多く、1カ月7例、1週間4例などだが、11カ月や18カ月もある▽フォローアップ方法は、電話が21例で最多。ほかに電話プラス訪問や電話プラス来局時もある▽フォローアップの理由は、個々の患者の特性21例、使用薬剤の特徴14例、罹患疾病の特徴6例-などとされました。
益山氏は、フォローアップ効果が得られた事例の特徴を整理し、▽新規処方・処方変更時▽服薬アドヒアランス不良(自己判断で服用中止や調節、残薬多数、認知症など)▽ハイリスク薬処方時(がん化学療法、麻薬、その他)▽手技不良時(自己注射、坐薬、浣腸、点眼剤の溶解困難など)▽副作用発現時(低血糖、ふらつき、下痢、低血圧、口内炎、手足症候群、吐き気、便秘、発熱、胃酸過多、遅発性ジスキネジアなど)▽ポリファーマシー、相互作用(サプリメント含む)▽服薬に関する不安(副作用)▽退院時処方(薬薬連携)▽処方提案(インスリン減量、止瀉薬、整腸薬追加、剤形変更、味覚異常に亜鉛製剤、オピオイド増量、副作用発現により減量など)-と項目を挙げています。
ただ、これらは最終報告に向け、さらに見直しを進めるということです。
こうした事例へのフォローアップで得られる効果が、副作用や症状悪化の予防、服薬アドヒアランスの改善、患者の不都合解消などです。その中で、事例によっては、受診勧奨をし、処方提案を行うべきケースが出てきます。
さらに、フォローアップで重要なのは、処方医への情報のフィードバックであり、患者への分かりやすい情報提供ということです。
これら事例の最終報告を踏まえ、次期診療報酬改定では、調剤後のフォローアップの新たな評価項目の検討が進められるでしょう。
3.フォローアップ点数の算定回数は急増
20年度改定で新設された、がん患者が対象の特定薬剤管理指導加算2と、糖尿病患者が対象の調剤後薬剤管理指導加算の算定回数は、急拡大しています。
特定薬剤管理指導加算2は、薬剤服用歴管理指導料(22年度改定後は服薬管理指導料)への加算と、かかりつけ薬剤師指導料への加算があります。
毎年6月審査分を対象としている社会医療診療行為別統計によると、薬剤服用歴管理指導料に対する算定は20年の329回が21年は2,529回、かかりつけ薬剤師指導料に対する算定は20年の39回が21年は285回へと急増しました。7.7倍と7.3倍です。
調剤後薬剤管理指導加算は、薬剤服用歴管理指導料への加算だけで、算定回数は、20年の286回が21年には591回と2.1倍に拡大しました。
特定薬剤管理指導加算2の関連では、既存点数の麻薬管理指導加算(22点)があり、21年の算定回数は、薬剤服用歴管理指導料に対するものが2万5,522回、かかりつけ薬剤師指導料に対するものが1,226回となっています。
同加算には算定回数の制限がなく、特定薬剤管理指導加算2は月1回までとなっているため、単純比較はできないものの、麻薬管理指導加算の算定回数が特定薬剤管理指導加算2の当面の目安になるでしょう。それに近いところまで伸びていくとみられます。
調剤後薬剤管理指導加算は、22年度診療報酬改定で、点数が30点から2倍の60点に引き上げられました。これにより、算定回数も伸びていくことになるでしょう。
「調剤後も患者の状態を継続的に把握」する調剤後のフォローアップは、厚労省の「患者のための薬局ビジョン」(15年)で、かかりつけ薬剤師が行うべき業務とされ、翌16年の診療報酬改定で新設された「かかりつけ薬剤師指導料」の算定要件となりました。
19年の医薬品医療機器等法と薬剤師法の改正では、調剤後のフォローアップは全ての薬剤師の義務とされ、さらに、22年7月の「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」のとりまとめで、推進すべき対人業務のトップ項目に位置付けられたのです。
次回以降の診療報酬改定で、調剤後のフォローアップに対する評価項目の新設や点数評価の充実が図られていくのは確実です。
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