何でもできるロボットのイメージと現実のずれを見つめよう
【病院の未来】神奈川県ロボット実装支援からの展望(下)
同僚がロボットで、現場に違和感は-。28日に開催するオンラインセミナー「働き方改革を実現する病院DX~神奈川県『新型コロナウイルス感染症対策ロボット実装事業報告』」(共催=神奈川県、NTTデータ経営研究所、CBホールディングス)では、こんな本音が聞けるパネルディスカッションもあります。湘南鎌倉総合病院事務長の芦原教之氏と東日本税理士法人代表の長英一郎氏がスピーカーとして参加。同事業の運営を統括したNTTデータ経営研究所の清水祐一郎氏がモデレータを務めます。
【関連記事】
伴走企画「【病院の未来】神奈川県ロボット実装支援からの展望」最終回(下)では、芦原氏と清水氏の対談を通じて、病院とロボットの現在地について考えました。
病院とロボットについて語る、芦原氏(右)と清水氏
清水氏 今回の実装事業によるロボット導入以前から、湘南鎌倉総合病院では、自律搬送ロボット「HOSPI(ホスピー)」やAI問診を取り入れています。いろいろご苦労もあろうかと思いますが。
芦原氏 コロナが、ある意味いいきっかけになりました。国が、お金をすぐに補填したところに価値があって、あれがなければ恐らく、ホスピーは導入していません。AI問診も、コロナという切り口でスタートしています。触らない、人との距離感という視点から導入したわけで、DX化の弾みを付ける動機付けに、コロナは確実になりました。少なくとも、うちの医療従事者には、ロボットやIoTという意識が加速度的に高まりました。
苦労があったかどうかと言えば、ありましたが、ロボット導入に、意外にノリノリな看護師も多く、当院として、とてもいい導入実証になりました。
清水氏 「ロボットを導入したい」と言った時の周りや上層部の反応はどうでしたか。現状では、ロボットを導入する病院は、それに関心のある一部の病院だけが目立ちます。こうした所はロボットへの理解があるかもしれませんが、ごくごく一般的な大病院や中小病院だと、周りの反発が恐らくあるのではないでしょうか。
芦原氏 ホスピーを入れる時も、AI問診を入れる時も反対されました。でも、DXを取り入れず、現場で誰かが苦労しており、その苦労を幹部はみんな知っているのですが、それが本当に現場の課題を解決できるのか、確信のないものには投資をしたくないというのがあるのかもしれませんね。
中小病院を含めた多くの病院では、そうした状況を、見て見ぬふりをし、現場で抱える苦労について下で何とかしろという意識が、これまで当たり前にあったのかもしれません。医師の働き方改革とコロナというパンデミックを背景に、こうした意識が変わりつつありますので、多くの中小病院でも、DXをやり出すのではないでしょうか。
芦原氏 ところで、AI問診などを導入する病院は増えていますが、DX全体から見ると、とても断片的に取り入れているような気がします。例えば、患者が来院してから病院を出るまで、一気通貫的なDXの提案などを民間企業ではやらないのでしょうか。断片的に行うから、多重投資になる恐れもあるわけですし。企業間で連携しながら、一気通貫的な病院DXのプラットフォームを構築し、その中で、それぞれの病院に応じた提案はできないものでしょうか。
清水氏 そうした大掛かりなプラットフォームを構築しようとするとなると、「●×ソリューション事業部」などがあって、まずは、組織内の別の事業部と交渉しなければならず、それが企業連携となると…。(笑)
芦原氏 ロボットに何を求めるか-。今回の導入実証を通じて感じたことです。
ロボットというと、一般的には「鉄腕アトム」や「ドラえもん」をイメージしますが、現実的には、そんなロボットはありません。ロボットができる現実と、それぞれが思い描いているギャップを埋めると、ロボットの導入がしやすくなるかもしれませんね。
清水氏 今回の導入実証を行う際、できる限り、現場の運用フローに沿うように、ロボット活用を考えました。ところが、実際に現場へロボットを投入すると、いろいろ想定していなかった動きが発生しました。導入から1週間で、ある程度の良し悪しが見えてきたのですが、その後のカスタマイズに対して、どの程度ロボット事業者がしっかり対応したか。それが、実証の効果に大きく影響しました。
芦原氏 ロボット事業者は産業的視点から提案してきますが、医療現場では、ビジネス色の強いサービスロボットには拒否反応を示します。医療というのは奉仕的なサービスの色が強く、要は全くフィールドが異なるわけです。そんな人たちだけで話すと、「病院とロボット」の話はかみ合わないんですよ。そこを通訳・コネクトしてくれる企業が必要だと、今回NTTデータ経営研究所さんとお仕事を一緒にしてみて、強く感じました。
清水氏 入退院説明ロボット「てみ子ちゃん」を、現場のフローを壊さず実装させるのはすごく難しかったです…。
医療介護経営CBnewsマネジメント
【関連記事】