M&A仲介サービス多様化、着手金の無料化も
ドラッグストアなどの事業継承ハードル下がる
調剤薬局・ドラッグストア、介護業界などを対象としたM&A仲介サービスの多様化が進んでいる。その背景には、売主・買主や事業規模・事業形態などの変化がある。例えば、高齢の経営者のケースでは、後継者不足や制度改正などに対応できないと考え、廃業を検討するケースも少なくない。また、門前薬局やチェーン店などを中心に、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受けて戦略の見直しを迫られるケースも報告されている。コロナ前と比べて、処方箋受付回数、技術料(調剤技術料・薬学管理料)、薬剤料・特定保険医療材料料が落ち込むなどして、薬局経営に少なからぬ影響が出ているからだ。
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こうした状況を受け、薬局やドラッグストアなどのM&Aを取り巻く環境にも変化が生じている。従前の仲介方法は、M&A会社や金融機関のアドバイザーが介在する方法が一般的だったが、プラットフォームを通じた直接やり取り(マッチングサイト)やAIマッチング、地方自治体が間を取り持つようなケースも出てきた。
仲介サービスの多様化により、売却・買収に当たっての費用の金額に幅が出てきたり、選択肢が増えてきたりしたため、M&Aには「お金がかかる」と躊躇していた人にとっては、利用しやすい環境が整ってきたと言えよう。
多様化の1つの試みが、M&A仲介大手のストライクが打ち出した、仲介の契約時に受け取っていた「着手金」の無料化だ。ドラッグストア・調剤薬局、介護業界をはじめとするM&Aの際には、仲介会社が会社の譲渡を希望する「売り手企業」から着手金を徴収するのが一般的で、従来はストライクも資産総額の大きさに応じて100万-300万円を受け取っていた。
後継者の不在などに伴う事業承継問題を解決する有効な手段の1つがM&Aとみられているため、ストライクはドラッグストアなどの経営者の仲介サービスへのハードルを低くすることで新規契約の増加を目指している。M&Aの敷居が低くなれば、企業の資本集約を通じた中小企業の生産性向上を後押しする可能性が出てくることが考えられるからだ。
ストライクは中小企業の事業承継を中心に、年間で100組超、200件超のM&Aを成約させている実績がある。従来は、仲介依頼の契約を結ぶ際に、▽資産総額が10億円以下の場合は100万円▽10億円超-50億円の場合は200万円▽50億円超の場合は300万円-の着手金を徴収していた。ただ、「実際に買い手企業を見つけてもらえるのか」「手元資金が少ない」などの理由から、着手金の支払いをためらう譲渡希望企業も一部にある。特にスタートアップでは、成長期待が高いにもかかわらず、資金が乏しい企業も多く、着手金の存在がM&Aの最初のハードルとなっていた。
このため、ストライクは譲渡を希望する企業と買収を希望する企業を引き合わせ、M&Aの基本合意を結んだ時点で「基本合意報酬」を支払ってもらう方式に変更。基本合意報酬の料金体系は、従来の着手金と同様にして、成約した際の「成約報酬」の体系も従来から変更しない。着手金の無料化により、「会社を譲渡したい」と希望する企業は、M&Aの基本合意まで費用がかからないことになる。仲介サービスの使い勝手が良くなるため、中小企業の事業承継の促進につながりそうだ。
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