薬局の事業多角化、鍵を握る高齢者住宅(2)
厚生年金の受給額以内で生活できる住宅を提案
「裕福層ではない一般的な年金所得層且つ軽度の要介護認定者」の行き場(住まい)が不足しています―。高齢者住宅を提案しているCBコンサルティング事業開発支援部の佐藤文洋次長は、現状をこう分析しています。高齢者住宅・施設を巡っては、要介護度3の高齢者が特別養護老人ホームの入居を待たされるケースが各地で相次いでいます。また、サービス付き高齢者向け住宅に入居したくても、入居費用(月額約14万円、全国平均)が経済的な負担になると考え、二の足を踏む高齢者が少なくありません。
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入居費用が月額約19万円(全国平均)の有料老人ホームについても、月額10万円前後の事業者も出てきましたが、入居費用を抑えた分を介護報酬で回収しようとの考えから、その多くは重度の要介護認定者をターゲットとしています。他の選択肢として持ち家やコンパクトさを求めて賃貸住宅への転居も考えられますが、高齢者向けに建設されていない建物が大半を占めており、転倒などのリスクが高く、住みやすい環境とは言い難い状況です。そのため高齢者の方々が安心して生活を送ることのできる管理された住宅の整備が求められています。
一方で、いわゆる従来型の「高齢者の住まい」は事業者側にもデメリットが生じるケースもあります。例えば、入居費用が高く、入居者や家族のニーズに合っていない場合、入居者を集められず、利益を上げられない可能性があります。また、軽度から重度までの幅広い要介護認定者を対象とした場合、必要なスタッフがどうしても多くなり、スタッフを集めきれなかったり、集められても採用費・人件費が高くなったりして経営を圧迫する恐れもあります。サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームの施設基準をクリアするため、建設コストだけでなく、初期投資額や運営費が高額にならざるを得ないケースもあります。
こうした「高齢者の住まい事業」における問題点を解消する方法はあるのでしょうか。佐藤次長は、「地域のニーズを正確に理解し、無理や無駄のない戦略を選択するならば、厚生年金の平均受給額(約14万円)以内で、かつ事業者にとって先述のデメリットがない高齢者の住まいを整備することができます」としています。具体的には、社会的問題になっている軽度要介護認定者の受け入れにフォーカスし、提供サービスを生活介助に絞り込むことで、人員数を他の介護施設の約半数に抑えられます。佐藤次長は「少ない人員で無理なく運営するオペレーションにより、収益性を高められる。当社はそのノウハウを提供できる」と自信を示しています。
要介護1、2の高齢者を対象にした高齢者住宅や介護施設は意外に少ないため、佐藤次長は「ビジネスチャンスは大きい」と考えています。CBコンサルティング事業開発支援部が手掛けた高齢者住宅のケースでは、オープン初年度の入居者の7割が病院の地域連携室からという例があります。これは、入居対象者層の設定が適切であったことを裏付けている証拠と言えそうです。
介護施設にありがちな無駄な建設コストなどを排除することも効果的です。CBコンサルティング事業開発支援部は、初期投資額を抑えることで損益分岐点を下げ、投資回収時期の目安を10年以内にすることを勧めています。佐藤次長は、「こうしたノウハウを調剤薬局に提供し、『高齢者の住まい』事業の立ち上げ、運営支援を行うことで、高齢者の住まいにおける地域の課題を解消すると同時に調剤薬局の新たな成長軸を創出します」と述べています。
◇掲載予定
第3回(2021年5月掲載予定) ケーススタディーやQ&Aを通して、第2回の内容を深掘りする形で、具体的な事業展開や地域包括ケアシステムにおけるビジネスモデルの構築などの方向性を示します。
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