CBnewsマネジメントで160回を超える人気連載「先が見えない時代の戦略的病院経営」を執筆する井上貴裕氏(千葉大医学部附属病院副病院長)は、「ちば医経塾」(千葉大履修証明プログラム)の塾長として病院経営のスペシャリスト養成に力を注いでいる。このほど、プログラム修了生の新井昌史氏(公立館林厚生病院長、群馬県館林市・329床)、重田みどり氏(国立病院機構下志津病院長、千葉県四街道市・440床)と鼎談し、病院経営の課題やコロナ対応などについて話し合った。【編集・齋藤栄子】
井上(以下、敬称略):病院長就任の経緯と、抱えている病院経営の課題について。
新井昌史氏
新井:2014年に群馬県の公立館林厚生病院副院長に就任し、15年から病院長を務めている。当院は急性期を主とする329床の自治体病院で、平均在院日数12日弱、新型コロナウイルス感染症の関係で病床使用率は75%、平均診療単価6万2,000円、経常収支比率95%と、赤字経営であることは間違いない。就任当初から病院経営に非常に悩み、病院を立て直そうとしている。当院の課題は、医師が少ないことにある。また、事務部の課長クラス以下は生え抜きだが、ローテーションでいろいろな部署を経験するため、専門性が育たないうちに異動する。医師に関しては、副病院長以下は自分の専門分野の臨床以外にあまり関心がなく、孤軍奮闘でやらねばならず、相談できる参謀がいないのはつらいと感じていた。
重田みどり氏
重田:小児科専門医として、心臓外科医の夫の転勤に合わせて各地で勤務医を続けた。07年から、国立病院機構千葉医療センターで勤務し、3年後を目途に開業するつもりで病院経営の勉強を少し始めたが、引き留めもあり断念した。その後、教育研修部長、統括診療部長を経て18年12月に院長の打診があり、20年4月に国立病院機構下志津病院へ異動して7月から院長に就任することになった。当時、国立病院機構には女性の院長がいなかった。教育研修部長として研修医の教育に夢中になっていた時期で、各科の先生にお願いする調整力が必要な仕事だったため、目に留まったのかもしれない。話があってから必死で病院経営を勉強した。国立病院機構は事務部門がしっかりしている。機構内で異動や転勤もあるが、一貫して病院職員なので助かる。病院によっては、水道局から異動するようなケースもあると聞く。
新井:当院も以前いた事務長は市役所の建設関係から来たので、病院経営は素人だった。市とのパイプ役にはなってくれたが、それ以上の期待は難しい。市長に病院経営の経験者に来てほしいと掛け合ったところ、2年ほど前から民間病院の事務部長経験者に来ていただけるようになり、明らかに変わった。私以上に知っているので心強い。むしろ、私自身がもっと勉強しなければいけない。
井上貴裕氏
井上:民間病院と違い、自治体病院は議会への対応が大変だと聞く。
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